キジしろ文庫

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京極夏彦「狂骨の夢」(上)

あらまし

「妾(わたし)は人を殺したことがあるんでございますよ」。湘南の保養地、逗子で遊民・伊佐間(いさま)は朱美と名のる女と出会う。彼女は幻想小説界の大御所・宇多川崇の妻。しかも奇怪なことにこれまでに何回も夫を手にかけたという。あまりに妖しい告白を聞かされた元精神科医の降旗と牧師・白丘は激しく惑乱して……。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 まだ、全てを読み切れず1/3ですので、ここまでの骨子や感想を書いておきます。

 ここでは、事実とも幻覚妄想ともつかない境界のあいまいな、宇田川朱美(佐田←南方)の、以下の未解決事件と現状の独白などに終始します。そして、夫の宇田川崇から相談を受けた関口らがいよいよ乗り出したところで、2/3に引き継がれます。

 とくに、兵役忌避後自宅にいったん戻り、朱美に語った夫の言葉「入営の前にこれだけは。もっと早く知っていれば。」などが気にかかりました。また、朱美の、自分が海中で肉が溶け骨になり水上に髑髏だけが浮かびまわりを見る夢?や、千葉九十九里で生まれ育ち酒屋の使用人となったことや痴態といった前世(転生)や首を持つ血だらけの神主と髑髏を抱えた僧侶の夢・妄想?、さらに人を殺しては首を切り落とし蘇る死人(殺人淫楽症?)、降旗の、たくさんの髑髏の前での交接の夢?、など、得体のしれない、忌まわしい狂気・猟奇・妖異・超常が漂うのが、強く印象に残りました。

 また、旅館の釣堀を任され、逗子の海岸で朱美と偶然出会い、話を聞いた伊佐間(マラリアで三途の川までいった体験を持つ)や、骨を怖がり、転生の考えをもつ牧師の白丘、その教会に居候し、朱美の懺悔を聞いた降旗(無意識の自己の姿、抑圧された性的願望・倒錯・歪んだ親子関係などに怯える、子供の時は木場と友達)らの動向も気にかかります。

 さて、骨子ですが、まず、長野上田盆地の塩田平で、朱美は13歳で酒屋に奉公に出たのち、実家(独鈷集落の時、頭屋と呼ばれ、髑髏が家宝だった)が火事により家族全員が焼死、その後(8年前)、18歳で夫婦となった夫・申義の首なし屍体が発見され、追うように籟病の義父が亡くなり、その葬儀で神主が髑髏を探します。さらに、夫の兵役忌避についての村八部や中傷を受け、それに伴う夫殺害の嫌疑と憲兵の取調べと解放、その後、同じ酒屋の奉公人でもあり、夫の情婦と思われる民江を本庄の利根川で殺害?、朱美は入水自殺?、その際に民江の持つ夫の髑髏をいれた?箱が流されてしまいます。そこへ居合わせた作家宇田川が朱美を救出し、妻となり現在に至るが、現在も住まいの逗子宅に来て、夫殺害を責め、髑髏を探す夫?憲兵?を、朱美は既に3度殺して首を切り庭は血の海となる、他方、申義の犯人と思しき民江の行方不明などが、混然一体となって明かされます。(2020.02) 

では、また!