リチャード・モーガン「オルタード・カーボン」(下)
あらまし
27世紀のサンフランシスコに展開するハードボイルド・アクション。元特命外交部隊コマンダー、タケシ・コヴァッチは、罠の渦中へ身を投じ、資産家バンクロフトが殺害された謎を解明していく。フィリップ・K・ディック賞受賞、生と死の深淵に挑戦したフューチャー・ノワールの最高峰。(文庫本裏表紙より)
よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★星1
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
2/2です。
本書では、永遠の生が可能となる一方で、人は心の疲れを感じている、そんな贅沢なぬるさの虚構によって、都市的な虚無的な生き方が生じています。このため、
①おもちゃを放り出すような生死の軽さ、不快で読むに耐えないエログロ、社会の底辺に蠢く虫けら・クズのような浅ましくて卑しい人間の醜さ、こういったものを楽しく読むクズの自分と向き合いました。
②そのような中に潜在する、邪悪さや業(蔑みといった他者への関心を通じた自己への執着、傲慢さ)を、力によって捻じ伏せ、否定する指向性や、そのための矜持などは、まあ頷けるところなあと思いました。
③数多くの発散的場当たりなところは考えものですが、ご都合主義は致し方ないところかなと、思いました。
以下、繋がりが支離滅裂でまとまりがありませんが、後編の抜粋です。
第21章 オルテガにより、VRでレイラ・ビギンと対面。バンクロフトの不貞による婦人犯行説を言及。男女2名の自爆テロに襲われる。
第22章 「ええ、コヴァッチ?もうクソたくさんだ」という台詞は、クウェリストのものであることから、AIもからんだカドミンだった推測。コヴァッチを発信器代わりにして、カドミンが拘置所の外に出しまっていたことによるもの。
第23章 コヴァッチのスリーヴに発信器を埋め込んだ女医と対面。女医は、上司のサリヴァン理事から、サイコパス追跡用と言われてやったことを話し、無効化のディスクを、コヴァッチに渡す。
第24章 サリヴァンを問い詰めている最中に、死んだはずのトレップが現れ、ボスのレイが逢いたがっていることを聞き、ヨーロッパへ向かう。
第25章 コヴァッチを紹介したレイリーン・カワハラと対面。恋人のサラを買収によって個人保管(人質)しており、バンクロフトの調査中止を要求に対し、コヴァッチはその話を飲んだ。なお、カドミンへの指示やその拘置所からの解放(危害を加えたのは本人意思)、ここへ連れてくるための発信器、クリニックの顛末も、カワハラの指示だったことなどが、明かされた。
第26章 今後を思案する。「人を判断するんじゃない。自分が判断されることになる」トレップ。「あの母親を忘れるな、わかったかい?」ジミー・デ・ソト。
第27章 ホテルでのコヴァッチと婦人との関係を入手したオルテガは、ヨットでコヴァッチと関係を結ぶ。
第28章 コバッチは、夫人・警察・犯人かもしれないカワハラらの希望通り、手を引こうとするが、娼館やVRポルノ店のリストをオルテガに求める。
第29章 仮説(バンクロフトは、娼館でウィル汚染されたので、遠隔送信を防ぐため自殺)をカワハラへ語り、そのために必要なウィルス調達とエリザベスの母親の仮釈放を要求した。さらに、屍姦などのために、カワハラのいる?空中娼館に送られた女性(蘇生拒否のカトリック?)が逃げようとした事故?を追うライカーはカワハラにはめられた、ことを思いつく。
第30章 AI経営のVR娼館へのウィルスインストールを、エリザベス(バンクロフトを脅迫しようとして、逆に殺された)の母は了承した。
第31章 実行(第32章の証拠隠滅)。
第32章 バンクロフトへ、ウィルス汚染防止のための自殺だったというデタラメを報告。しかし、部屋の望遠鏡から見えた空中娼館、レイリーン・カワハラそして婦人との関係があることに気が付く。
第33章 首を持ち帰ったクリニックの医師への、空中娼館の警備や部屋割り図などのVR拷問。
第34章 オルテガを人質にとったカドミンから、コヴァッチ自身との交換を要求され、オルテガを想いヒンチリーやライカーの疑惑を晴らすため、受け入れた。
第35章 格闘技場でライカーに恨みを持つ観衆を前に、カドミンとの屈辱ファイトとなる。
第36章 意識が薄れる中、トレップと警察の銃撃によって、助けられる。
第37章 オルテガと再会。自殺することで記憶を消すという気づきから、カワハラがバンクロフトにやったこと、第653号判決の執行、ライカーの釈放のため、空中娼館に向かうこととした。
第38章 エリザベスの母と再会。婦人との再会を二重スリーヴィングしたライカーが出発。
第39章 エリザベスの母に空中娼館に係るサイバーモノを依頼し、空中娼館の図面などの入手、空中娼館からヨーロッパへの秘密の更新情報の確認と、さらに薬物と武器を調達した。
第40章 空中娼館潜入。
第41章 レイリーン・カワハラと対決し、カワハラもろとも自爆。以下を聞き出して。
①カワハラの遠隔更新にウィルスを仕込んだこと、
②ヒンチリーは、スナッフのため逃げ出し落下したもの。ここで、カワハラは、カトリックであることに問題があることに気付いたライカーに、偽造を指示するという罠をかけた。しかし、第653号判決が出たため、ライカーの件が取りざたされるのを恐れ、バンクロフト宅での判事やバンクロフトの協力を得ようとするが失敗。当のバンクロフトは、既にカトリックの淫売を殺してしまったがゆえの自殺だった(第653号判決の反対も、殺害を認めることができず)。
第42章 バンクロフトの殺人は、婦人の指図によってスリーヴにクスリを仕掛けることによって行われたもので、夫の不貞に対して殺人の罪悪感を植え付けるといった夫を傷付けたいという身勝手さによるものだった(カワハラの差し金もあった)。
(2020.11)