キジしろ文庫

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京極夏彦「狂骨の夢」(中)

あらまし

「あなたの夢こそ鍵になるでしょうね」。京極堂は刑事・木場とともに店の敷居を跨いだ降旗にそう言った。逗子湾に浮かぶ金色の髑髏、葉山の山中で起きた男女集団自決に絡まり縺れるようにして殺された老作家・宇多川。やはり犯人は朱美か?目撃された「復員服の男」とは何者なのか?謎は謎を呼ぶ。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 ここ(2/3)では、前回からさらに明るみに出た情報が積み重なり、接点をもつことで絡み合い、いよいよ事態は複雑混迷化してきました。関口らは、究明すべく京極堂のもとに集まり、それらを結ぶ一本の線が徐々に見えてきつつあります。なので、解決筋の見えないイヤなモヤモヤ感を抱えつつ、また、いつのまにかまとわってしまった憑物の怪しい気配を感じながら、次(3/3)への期待感がとても高まります。今回は、忘れのないよう書き留める程度にしておきます、しまりがありません。

①金色髑髏・逗子湾生首事件:波間や浜辺で金色の髑髏が逗子で散見され、さらに普通の髑髏、肉片や髪を生やしたものに発展し、ついには生首が発見される。どうやら、港湾労働者らしい。
②熊澤天皇事件:戦後、南朝の後裔を名乗りその正統性を世間に騙ったもの。なお、それに対する憤りを述べ、独鈷杵をもち出家した下記当事者が下記女性当事者を誘拐?。その父は、酒造で働いていた。
③二子山10人集団自殺事件:菊花紋匕首による無理心中。なお、当事者の多くは酒造の関係者。
④牧師白丘の回想:
・般若の鐘:嫉妬に狂い怨んだ妻が夫の喉を噛み千切る夢を見た後、亡くなった夫の骨箱をもつ相手の現地妻と善行寺で会い、ともに出家することで奉納したもの。
・反魂の術:石川県鍵取明神に骨箱を持つ4人の神人と遭遇し、その後鎌倉でも出会う。一揃いとなるよう骨を全国で集めているもよう。そうすることで、人を造り出す、という西行法師の死者を復活させる術が不気味。
⑤聖寶院文殊寺:伊佐間が再度訪れた逗子で侵入したお寺。檀家は少なく葬儀も1回しか行われていない。その後、伊佐間は、宇田川の現場で復員服の男を見かける。
⑥降籏は、関東大震災時、神奈川にて過ごしていることを思い出す。夢の原因が今後垣間見れそう。
⑦自宅にて、自白した朱美?による作家宇田川殺害事件が発生。狂人のふりをする佯狂との鑑定結果が出されるが、事件の際の朱美の幻想とも記憶とも思える発狂者の深層心理を覗いてしまった後味の悪さが残ります。なお、物的には、事件通報者不明、宇田川の食事がされてないことや着衣の河口での発見、宇田川隣家の一柳は朱美を取り調べた元憲兵であること、宇田川家の庭石は飾りとなっている井戸の中にあることなどが語られる。
⑧なお、狂骨とは、井戸から現れる、凄まじい怨みによって死霊化したものらしい。(2020.02) 

では、また!