キジしろ文庫

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ロバート・A・ハインライン「夏への扉」

あらまし

 ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に大切な発明までだましとられたぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ。そんな時、「冷凍睡眠保険」のネオンサインにひきよせられて…永遠の名作。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

  本書では、不条理に晒された人間の運命にあっても、冷凍睡眠やタイムマシンの利用などの手段を講じていき、自分本位の周辺環境を作り変えていくといった、何度も試される試練へ立ち向かうことを”問われている”ところ(主人公は嘆き恨みこそすれ、チャレンジする)が、読む人を惹きつけるところかと感じました。以下、簡単にまとめました。

 群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、そんな自由気ままな猫が好きな発明オタクが、簡単に女に騙され、親友に裏切られ、特許を盗まれ、会社を乗っ取られ、財産を失い、結果的に猫とも離れ離れになってしまいます。

 そこで、主人公は冷凍睡眠によって逃避しますが、その30年後は、自分の想像や希望に沿ったものではなく、また、当時と30年後の記憶で、個々事象に食い違いが見られました。

 このような状況から、主人公は、その修復をする存在者の必要が生じていることがわかり、タイムマシンによって30年前に戻り、その修復を行います。 そのうえで、再度、冷凍睡眠によって30年後に行く、というものです。

 勧善懲悪・ハッピーエンド・アメリカンドリームです。

 なお、以下は、30年後に見た相違点などです。括弧は30年前に戻った時に行っています(30年前には、主人公は未来から戻って来たのと合わせて2名います)。

×当時、気にかけていた11歳だった少女が、その後行った冷凍睡眠後の再会を果たせず、しかも既婚であったこと(→冷凍睡眠後の再会を伝達する)

×連れ立つべきだった猫がいないこと(→一緒に冷凍睡眠する)

?少女あてに贈った株券の裏書の有無(→有にする)、当時の発明試作品の有無(→無にする)やマイルズ宅に乗り付けた自動車の有無(→無にする)

?自分は冷凍睡眠したので、できないはずの自分が特許したと思われる、素晴らしい製品が普及していること(→特許を手掛ける)

?当時、自分を騙し裕福となっているはずの女が、荒んだ惨めな生活をしていること(→詐欺横領放火殺人等の身上書を少女に託す)

(2020.11)

では、また!