キジしろ文庫

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渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9」

あらまし

 もうすぐクリスマス。小さい頃はプレゼントがもらえる日だったが、今はもう違う。何より、願うことも、欲しいものもなくなってしまった―。生徒会長選挙の日以来、何かが決定的に終わってしまった関係を引きずりながら、逃げ出さないため、ただそれだけのために部室に集まる八幡たち。そんな折、新たな依頼を持ち込んだのは、先の選挙で生徒会長となった一色いろは。他校との合同クリスマスイベントを手伝って欲しいという依頼に対し、一人で行動しようとする八幡だが、一筋縄ではいかない依頼に事態は次第に悪化していく…。 (文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

  一色いろはが、総武高校と海浜総合高校の両生徒会による合同クリスマスイベントを奉仕部に依頼します。比企谷八幡は、雪ノ下の生徒会長となることを、一色いろはとともに阻んだわだかまりやら責任の念が強く残っており、そのため依頼を比企谷八幡独りで引き受けます。しかしながら、比企谷八幡由比ヶ浜結衣雪ノ下雪乃の3人は、このイベントや平塚静先生のアドバイス(下記参照)を通じて、距離感を測れないギクシャクした関係を持ち直すことで、無事成功をおさめることができました。

・人と人とが存在するかぎり、必ず傷つけ合うからこそ、他者を大事に思い、その覚悟が求められるというもの。だからこそ、手に入らないものがあるし、だけど、それは悲しむべきことではなく、むしろ誇るべきことである。 

 以下、ポイント的なところを多々引用。

 

(1)ボッチゆえの捻くれながら育つ、相手を尊重しあう対等な友人の関係

P183

「・・・でも困ったら意ってね?」

 最後に念押しするような問いかけに、俺は無言で頷いた。真剣な問いかけだからこそ、安易に言葉にしてはいけないと思う。戸塚が信頼や協力を美しいものだと思っているならなおさらのこと。

P184

 かっこいいか・・・。

 そんなもんじゃない。たぶん、ただ意地になっているだけなのだ。単純にかっこつけているだけなのだと思う。

 己の中に定めた、自身のあるべき姿を裏切るまいと、そうやって依怙地になっているにすぎない。

P215

「けど、別にもう無理する必要なんてないじゃない。それで壊れてしまうのなら、それまでのものでしかない・・・。違う?」(中略)

 それは、俺が信じていて、信じきれなかったものだ。

 けれど、雪ノ下は信じていた。あの修学旅行のとき、俺が信じきれなかったものを。(中略)

 海老名さんと三浦、そして葉山。

 彼女たちは変化のない幸福な日常を求めた。だから、少しずつ嘘をつき、騙して、そうまでして守りたい関係なのだろう。それを理解してしまった以上、簡単に否定することはできなかった。(中略)

 俺は彼らと自分を重ね、その在りようを容認してしまった。俺は俺であの日々をそれなりに気に入っていたし、失くすのは惜しいと感じはじめていた。

 いつか必ず失うことを理解していたのに。

 だから、心情を歪めて自分に嘘をついた。大事なものは替えが利かない。かけがえのないものは失ったら二度と手に入らない。故に守らなければならないと、そう偽って。(中略)

 うわべだけのものに意味を見いださない。それは、俺と彼女が共有していたであろう一つの信念。

 ーその信念を今も持っているか。

P240

 人と人とのつながりはきっと麻薬だ。知らず知らずに依存して、そのたびにじんわりと心を蝕む。そのうち他の人に頼らなくては何もできなくなってしまう。

P241

 俺が一色を推した理由は雪ノ下と由比ヶ浜を会長にさせないためだ。二人を会長にさせたくなかったのは、なぜだ。(中略)

 欲しいものがあったから。

 たぶん、昔からそれだけが欲しくてそれ以外はいらなくて、それ以外のものを憎んですらいた。だけど一向に手に入らないから、そんなものは存在しないとそう思っていた。

 なのに、見えた気がしてしまったから。触れた気がしてしまったから。

 だから、俺はまちがえた。

 P255

「俺は、本物が欲しい」

P342

「いつか、私を助けてね」

P395

「一緒に傷つくのなら、それは傷ではないのかもしれないな・・・。破調の美、か」(中略)

「傷ついたり、歪んでいたり、・・・あとは、捻くれていたりしても見る者が見れば、美しく思うこともある。そこにはちゃんと価値がある。(中略)」 

P402

 おそらく協力や信頼は、想像されるより、本当はもっとずっと冷たいものなのだと思う。

 一人でやっていいし、一人で出来なきゃいけない。人に迷惑をかけずに生きられて、初めて人にものを頼めるのだ。一人で生きられるようになって、初めて誰かと歩いて行く資格がある。

 一人で生きられるから、一人でできるから、きっと誰かと生きていける。

 

(2)あざとすぎる一色いろは

P50

「せんぱーい、やばいですやばいです」

 相変わらずあざとい・・・。ちょっと庇護欲そそられちゃうからやめてくれませんかね・・・。力になってあげたくなっちゃうだろうが。

P69

「はっ!もしかして、今の行動って口説こうとしてましたかごめんなさいちょっと一瞬ときめきかけましたが冷静になるとやっぱり無理です」

「ああ、そう・・・」

 俺は何度こいつに振られればいいんだろうか・・・・もう否定するのも面倒だなあ・・・。

P86

「けど、すごーいとかわたしも頑張らなきゃーって言うと、超受けいいですよ。あとはたまにくるメールの相手だけしとけばオッケーみたいな感じです」

「お前いつか刺されるぞ・・・」

 今はよくても、いつか手痛いしっぺ返しを食うんじゃないかと心配になる・・・。モテない男子って妙に純情で一本気、かつ、一途でひたむきなところがあるため勘違いしやすいのだ。なにそれよく考えたらモテない男子、超いい奴じゃん!なんでモテないの?ふしぎ!

P109

「やだなー、素に決まってるじゃないですか!」

 一色は片手で頬を押さえ、はにかむ。いや、わざわざあざとくやらんでも・・・。

 

(3)実行責任をもたない海浜総合高校生徒会長玉縄(相手の意見を否定せず、すぐに結論を出さず、どう対応するか議論を発展させ、総意をつくるだけ「じゃあ、みんなで一緒に考えよう」「頑張ってみんなでカバーしていこうよ」。)

P86

 意識高い系:成長志向強いアピールをしたがってしまう連中のこと。もっともらしいビジネス用語や経営学の用語をふりかざし、他とは違うできる自分を演出したがるちょっと痛い子たち。

P111

 彼らが求めているのは別にボランティア活動そのものではなく、そう言う活動をしている自分たちに対する自己承認欲求にほかならない。彼らは仕事がしたいのではない。仕事をしている気分に浸りたいだけなのだ。やっている気になっているだけなのだ。

 そして、最後はできているつもりになって結局全部台無しにする。

(2020.10)

 では、また!