渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6」
あらまし
文化祭。面倒な仕事をスルーする方法は…呼ばれても返事をしない、面倒くさそうな気持ちを顔に出す!?ぼっちのスキルをフル活用して、文化祭の準備から逃げる気満々の八幡。しかし、HRをサボッている間に、文化祭の実行委員にさせられてしまう。新学期が始まってからの八幡は、どこか調子がおかしい。クラスでも、部活でも…。雪乃への疑問は消えないまま、そしてそれを問わないまま…前に進まず、後戻りも出来ない二人、雪ノ下雪乃と比企谷八幡。決して近づかない不変の距離感に変化は訪れるのか。好評シリーズ第6弾。 (文庫本裏表紙より)
よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★星1
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
文化祭実行委員長の相模南(見てもらいたい・かまってもらいたという自意識過剰で虚構を張っただけ。サボリもあり、自ら頼んだ手助けの雪ノ下雪乃によって、惨めさを味わい居場所を失う)の逃亡に対して、雪ノ下雪乃を中心に、みながひとつになって協力・助け合うことにより、文化祭最終のエンディング危機を無事に切り抜けることができました。
このように雪ノ下雪乃が徐々に変わる一方で、とくに、カースト最底辺の比企谷八幡が、上位の相模南を誹謗中傷・傷つけることで、悪役(嫌われ者)が入れ替わってしまう自己犠牲(他者の視線・評価はそのように見ていない)が本書のポイントでした。
つまり、主人公たちは、将来性を伴わない排他的に繰り返すゼロサムゲームにはまり込んでいます。「幸福が有限の資源だとすれば、君の不幸は余剰を一つ産みだした。その分は勿論俺が頂く。」(「太陽の塔」森見登美彦)
他方、本書は、上記の他者を意識する面倒な対人関係とは縁を切っているボッチが、対人関係をとりもつハメになる、という矛盾をかかえることで、ひとつの成長・変化をもたらす?構図のようです。現状、ボッチとして、リア充たちとは棲み分けをし、距離を置くことで対等な人間関係を築いていますが、今後、どのようにして、そのような矛盾を抱えた関係性を、腹の中に落とし込んでいくのか、期待です。(2020.08)