桜庭一樹「私の男」
あらまし
落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった10歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から2人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く。(文庫本裏表紙より)
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よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★星1
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
本書では、孤独や不信感から血の繋がりに執着した精神異常者が、親子で男女で共犯の背徳・倒錯的濃密な閉塞世界をつくりだすことで、さらに満たされない飢えを求めあい、行き場をなくしてしまうこととなる、というお話です。
さて、本書の内容にふれるとすれば、このような今の自分に向けた短絡的で執拗な欲求の満足には、ひとたび方向を間違えたり、そもそも抜け落ちてしまえば、社会のルールやモラルをものともせず、非人道的なものにもなることに気が付かないといけない、と思います。おそらく淳悟は最後まで獣道なため、最初(最後)は、別の美味しい獲物に、既に手をつけていると思います。
たとえ小説でも、感性だけで、問題投げっぱなしで済むものではないし、また安易にほめそやすことは、あってはならないと思います。(2020.02)