キジしろ文庫

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ロバート・A・ハインライン「銀河市民」

あらまし

 太陽系を遠く離れた惑星サーゴンでは、およそ時代おくれな奴隷市場が開かれていた。薄汚れ、やせこけた、生傷だらけの少年ソービーを買いとったのは、老乞食バスリムだった。だが、ただの乞食とは思えぬ人格と知性を持ち、ときおり奇怪な行動を見せるバスリムとは何者?銀河文明のかげでめぐらされる陰謀と自分の出自を探るべく、ソービーは人類発祥の星である地球へと向かうが…広大な銀河を舞台に描く傑作冒険SF。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書では、主人公が、かずかずのたいへんな苦労をしながらも、養父の遺志を継ぎ、成長するなかで、人生の自由な選択と責任を自覚し、社会や組織との対等な関係を築き、さらに、周囲の自由・生命・幸福を阻むものを取り除こうと、能動的に社会への貢献を果たしていくすがたに、とてもはずむような良い気持ちになる読後感となりましが、他方、フッと我にかえると、すっかり自由主義個人主義にハマ(拘束され)った自分を認めていました。

 以下は、簡単なとりまとめです、参考まで。

(1)社会未参加

 宇宙軍特殊部隊バスリム大佐は、奴隷交易の諜報員として惑星サーゴンに潜入しています。その調査内容の通信手段として主人公のソービーを買い取り利用する一方、ソービーの家族を探し、その元へ帰そうとします。ソービーは、バスリムのもと、乞食をしながら言葉や数学などを学び、解放奴隷の手続きによって自由民となります。しかしながら、サーゴンの警察に追い詰められたバスリムは服毒自殺し、同様に追われたソービーは養父バスリムの言いつけに従って、クラウサ船長に会い、交易船シス号に乗り込みます。

(2)家族制度への盲従

 シス号は、惑星間での物々交換をしていく自由商人の船です。シス号は、バスリムに助けてもらった借りがあったことから、ソービーを船長の養子とします。その理由は、船内は血縁・姻戚などによる強固で排他的な同族社会に基づく地位・特権、複雑なしきたりや慣習といったローカルルールが支配する共同生活からなっていたからでした。

 ソービーは、火器管制員として海賊船を原子弾頭つきミサイル撃破するなど成長する中、いよいよ養母の結婚策略によって船を離れられなくなります。しかしながら、船長は、バスリムの伝言に従い、ソービーに親元を捜させるべく宇宙軍巡視船ヒドラ号へ引き渡をします。

(3)規律や法規に隷属し、反抗や嫌気をもよおすも、差別意識や権力・奴隷制度の事実を実感し行動するなかで、能動的な人生の選択を行う、自由と責任ある市民に成長

 ソービーは、船内での差別意識に対し騒ぎを起こし、規律に基づき処分されるところで、身元照会によって判明した地球へ送還されます。

    地球では、亡父母の後を継いで巨大財閥の当主となります。仕事に忙殺されながらも、再度入隊を希望した宇宙軍と協力して、以下のような、組織維持の責任を果たしつつも、奴隷制度の廃絶といった自由への貢献を選択します。

・委任状や持ち株などをウヤムヤにし、地位と支配力に執着する叔父たちを、法廷や株主総会で、相続の確定と解任を実行。

・地球では、奴隷制度の実在の認識すらない。両親は、その調査旅行中に宇宙海賊の襲撃にあっていた。会社が奴隷交易の宇宙船建造などに関与している。

(2021.04)

では、また!