キジしろ文庫

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垣谷美雨「うちの子が結婚しないので」

あらまし

 老後の準備を考え始めた千賀子は、ふと一人娘の将来が心配になる。28歳独身、彼氏の気配なし。自分たち親の死後、娘こそ孤独な老後を送るんじゃ…?不安を抱えた千賀子は、親同士が子供の代わりに見合いをする「親婚活」を知り参加することに。しかし嫁を家政婦扱いする年配の親、家の格の差で見下すセレブ親など、現実は厳しい。果たして娘の良縁は見つかるか。親婚活サバイバル小説!(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと 

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書では、子供に少しでも結婚への気持ちがあれば、恋人といった「憧れの人」から、人生の荒波を共に乗り越える善良、勤勉、優しい「同志」といった切り替えがないと到達できないし、グズグズすれば、状況は悪化していくこと。そのためには、気持ちを掘り起こし、または気づきを与え、助言・助力し、傷つき・挫折を乗り越え、自立に導くこと。それは、我が子であればこそわきおこる親の気持ちには、経験者ゆえの特別ものがあるからということ。また、そうであればこそ、子も素直に反応できること。こういったことが書かれていたのかと思います。

 ところで、医療や暮らしの向上があっても、自然災害や気候変動、感染症流行などの想定外の変化が起きています。単なる自然のいとなみのひとつでしかなかった人の結婚や家庭・出産にも、避けられない変化が生じているのでしょう。

 とくにそれは、自分さえ良ければいいといった視野の狭さや、短期的なものの見方といった身勝手さに裏打ちされているのかなと思います。

 このためには、漫然と見過ごすことなく、親婚活だったり、専業主夫だったり、結婚や家庭のいろいろなスタイルを認めて、サポートしていく必要があるのだなと感じました。

 さて、以下に、本書にあったいろいろな親婚活時の羅列をしておきます。

・独身者には老い・孤独・病気・住まいやお金への不安や恐れがあるだけでなく、結婚に対する劣等感や嫉妬心が存在しており、結婚への気持ちはある。

・参加者にサクラの存在といった婚活会社としての思惑がある。

・美醜、年齢、学歴・職業や社名(親兄弟も)、収入、住まい、同居別居、共働き、初婚再婚そして人柄、こういった情報をもとに婚活が始まるが、嘘をつく、美容整形する、水着写真持参で女を武器にするといった手練手管を使ったり、さらには舅の好み、お手伝いさん代わり、家族の中の落ちこぼれの一発逆転狙い、介護狙い、ローン肩代わりなどの親の思惑がまとわりつく。

・他方、当人たちにも、外見、男尊女卑、パーフェクトを望む、生理的嫌悪感、夫婦別会計、離婚の可能性などさまざまに考え方に違いが出て、なかなか巡り会えない。

・結局、それは、ギャンブル・DV、お里が知れるなどの育ち、価値観、生活水準の違いといった両家のつりあいがカギになる。

・いずれにしても、申し出を断られれば、全人格だけでなく家族をも否定されたように傷つき、敗北感や屈辱感をあじわい、そして怒り・罵ってしまうように、婚活では、折れないこころが鍛えられる。(2020.03)

 では、また!