キジしろ文庫

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E・ブロンテ「嵐が丘」(上)

あらまし

 ヨークシャの荒野に立つ屋敷<嵐が丘>。その主人が連れ帰ったヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに恋をする。しかしキャサリンは隣家の息子と結婚、ヒースクリフは失意のなか失踪する。数年後、彼は莫大な財産を手に戻ってきた。自分を虐げた者への復讐の念に燃えて…。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 言わずもがなの名著です。まだ、前半ですがこれまでのところで、よみおえて、おもうことの一端を、以下に書きとめておきます。

 本書は、人種的偏見、階級差別、男女格差(家長が財産や妻子を支配し、女性は自立など抑圧されるといった家父長制)などの強固な慣例を越えられず、正直に生きることのできなかった恋人たちの悲哀と悔恨なのだろうと、思いました。

 また、ヒースクリフの復讐は、自由(な恋愛)を阻むものは、排除しなければならない、という信念のもと、むしろ、ヒンドリーたちが無意識に憑りつかれている差別といった悪霊を打ち壊そうとしていることかなあ、と感じました。

 以下は、備忘のための簡単なとりまとめです、参考まで。

・孤児でジプシーのヒースクリフは、旧家のアーンショウ家に連れ帰られます。その父には気に入られ、娘のキャサリンとも仲良くなって気持ちを深めていきます。しかし、息子のヒンドリーは、嫉妬からヒースクリフをいじめ、父が亡くなると召使に身分を落してしまいます。

・その後、キャサリンは、格上の隣家リントン家の犬に噛まれたことで療養するのですが、二人の仲を裂こうと施した躾によって、その後、美しく上品な身だしなみや礼儀を身に付けて戻ってきます。それを見た粗野なヒースクリフは、屈辱や劣等感、引け目を感じますが、キャサリンの心は変ることはありませんでした。他方、ヒンドリーの意地悪は続き、ヒースクリフはヒンドリーへの復讐を、この頃から考え始めます。

P133「何てことを言うの、ヒースクリフ!」あたくしは申しました。「悪い人間を罰することができるのは、神だけですよ。あたくしたちは赦すことを知らなければなりません」「いいや、そんなよろこびを神に奪われてたまるか」と、彼は言い返しました。

・やがて、ヒンドリーには、息子のヘアトンが誕生しますが、溺愛する妻が亡くなったことで、全てを呪い罵り、身を持ち崩し、アーンショウ家は荒れすさみます。そんななかで、リントン家のエドガーの心をつかんだキャサリンは、ハンサムでお金持ちのエドガーからの結婚の申し出を受けてしまいます。

・そこへ、家政婦との節操のない身勝手な相談話(ヒースクリフを愛しているものの、それでは自分をおとしめてしまう。なので、エドガーとは結婚しても、ヒースクリフとは決して別れることはない)を耳にしたヒースクリフは、失意のうえ失踪してしまいます。キャサリンは、話を聞かれてしまったと思い、精神錯乱に陥いるほど悲しんだものの、やがてエドガーのもとへ嫁いでいきます。

・そして3年後、逞しい立派な紳士となったヒースクリフが、復讐のために戻ってきました。再会を喜ぶキャサリンたちに対し、エドガーは、もともとヒースクリフ差別意識を持ち嫌いだったことと、嫉妬もあって不機嫌になります。

・また、ヒンドリーは、ヒースクリフのもつお金に欲を出し、屋敷に住んでもらいますが、ヒースクリフに逆に資産を奪われ、ヘアトンの心も含めて荒廃していきます。そして、ヒースクリフがキャサリンの所へ出入りするうち、エドガーの妹イザベラがヒースクリフを好きになってしまいます。

エドガーは、ヒースクリフの邪悪な心を見抜いて嫌悪しており、結婚を認めることはできません。ヒースクリフを挟んだキャサリンとイザベラの三角関係もあって、エドガー家は冷え切ってしまいます。

・そこで、キャサリンたちは、イザベラに、ヒースクリフには凶兆がついていること、ヒンドリーの惨状などを言い含めて、忘れさせようとしますが、うまくいきません。また、キャサリンは、訪ねてきたヒースクリフに、イザベラにかまわないよう言い含めます。しかし、ヒースクリフは、エドガーだけでなくキャサリンをも憎んでいることから、やりたいこと(イザベラが嫌いにもかかわず財産目当てで言い寄る)をやらしてくれるようキャサリンに告げます。キャサリンは認めます。

エドガーは、事の一部始終を聞き、とにかくヒースクリフに追い払い、出入り禁止にさせようとします。これを気に入らないキャサリンは、エドガーにタテつき、ヒースクリフをうまく逃がします。そこで、エドガーはキャサリンに自分かヒースクリフのどちらかと手を切るよう迫りますが、キャサリンは返事を拒否します。

・他方、エドガーはイザベラに色よい返事をしたら兄妹の縁を切ることを伝えます。しかし、イザベラはヒースクリフと駆け落ちしてしまいます。

P253 あなたもサタンとおなじで、人を不幸にするのが大好きなのね。

P257 君という人は、どんな高潔な人間でも汚染してしまう、精神の毒だ

・このようなわけで、キャサリンエドガーへの恨みと不安、不幸な気持ちなど大きなストレスを抱えて、二度目の正気を失ってしまいます。なお、キャサリンは一命を取り留め、その後回復に向かいます(女の子キャサリン・リントンを宿しています)。

・そうこうするうちに、アーンショウ家に戻ったイザベラは、ヒースクリフから資産を取り返そうと殺気立つヒンドリーが迎えるなか、この結婚の意味をヒースクリフから知らされ、絶望に至ります(エドガーの代わりにイザベラを苦しめ、そして、エドガーを支配するための結婚で、さらにイザベラの憎しみをかきたてるものであったこと)。

・さて、ヒースクリフは、キャサリンの病状を聞き、キャサリンとは強い愛情で繋がっているゆえに、エドガーには任せられず、キャサリンとの再会の画策します。

P307 ヒースクリフさんは人間なのですか。だとしたら狂っているのですか。そうでなければ、悪魔なのですか。

(参考)キャサリンは、快活で奔放、我が強く高慢、荒々しい感情の持ち主。ヒースクリフは、野性的、我慢強く陰気、卑しくひねくれたタイプです。

 (2022.02)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!