キジしろ文庫

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スタニスワフ・レム「エデン」

あらまし

 惑星エデンに、6人の地球人科学者を乗せた宇宙探査船が不時着した。だが、地表で彼らが見たものは、巨大な生体オートメーション工場、その大量の廃棄物、そしてエデン人の累々たる死骸の堆積だった。一つの個体が労働部分と思考部分に分かれた複体生物であるエデン人に、いったい何が起こっているのか・・・?未知なるものとの出会いを豊かな想像力で描き、『ソラリスの陽のもとに』『砂漠の惑星』とともに三部作をなす問題作。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書からは、人間は、自ら作り出した時代や社会構造から、目的や意味を押しつけられ、疑うこともできずに盲従させられ、悩み苦しみ、また自己満足に耽るように、操作されている、道具化しているといった、無機質の虚無的な印象を持ちました。

 また、その実体は水やタンパク質でできた有機物であったり、地球循環のなかの生物進化の一つであったり、あるいは、記憶装置や学習機能を備えた無垢のロボットやAIに過ぎないとさえも感じました。

 しかしながら、このようなミもフタもない行き場のないものであればと思えばこそ、けつをまくり、開き直るということもあるのだと、思います。

 いずれにしても、既に、引導は渡されているのだという、生命のあることの自覚を持たなければと、感じます。

 さて、以下は簡単なとりまとめです、参考まで。

(1)要点

 エデン星に不時着した宇宙飛行士たちは、地球的思考からすれば、その悲惨な非人道的社会に対して、義憤や憐れみを感じ、エデン人とコンタクトします。

 しかしながら、エデン人の進んだ科学技術、生体・精神構造といった、エデン星が作り上げた生命の成り立ちへ、更なる地球的思考や精神の押しつけ・介入は、エデン人の価値観や倫理観に変わるところはあっても、生命の営みに対しての無意味さや無力感は拭えず、地獄でも、楽園でもあるエデンを、修理を終えた宇宙船で立ち去ります。

 なお、これらは、宇宙船の修理完了間近に、エデン人による宇宙船ごとの軟禁化された(他から干渉してほしくなかった)なか、宇宙船へやってきたエデン人とのコンタクトによって、明らかになったものでした。

(2)非人道社会

・当局が、かつて行った全エデン人の細胞レベルでの改変治療に失敗したために、現在も生じている、目・鼻・指・色などの不具・畸形や精神不全者に対して、集団力学に基づいた罪や恐怖、憎悪の感情の独特なバランスや転換を起させ、結合させ、言語・合意などをも奪うことで人格を失わせ、強制労働とその果ての自決に追い込む(マインドコントロールやKYのような)潜在的操作がはたらいています(自動制御集団)。

・エデン人の当該者たちは、反抗をはじめとした考えなど及ぶこともなく、しかし、その怯えから一時的なパニックを起こしながらも、以下①~③をたどっているようです。

 ①隔離場:宇宙飛行士たちは、エデン人たちのパニックに巻き込まれますが、その帰り際に、助けてもらおうとした?エデン人1名を宇宙船へ連れ帰ります。

 ②有毒ガス処理場:宇宙飛行士たちは、エデン人たちのパニックに巻き込まれ、さらに、有毒ガスが放出されたことから、砲撃を行います。

 ③処分場:宇宙飛行士たちは、墓穴を埋めた後に向かってきた、毛むくじゃらの獣と銀色の巨体に発砲します。

 なお、当初に発見した工場は、細胞改変時に要した生体?生産工場が放置された状態のものであったようです。その生産中、一部の規格外の生体が処分されていたようです、第二工場で。

(3)エデン人の生活

・小さな胴体のある牡蠣のような複体の容姿で、無機物を食料にし体内に電気を持ち、埋め込まれた金属の管によって文字を書きます。

・一般エデン人は、半分に切られた樽のようなもので移動します。市外では、渦巻円盤です。その渦巻円盤や工場へのエネルギー供給ラインが畝かもしれません?

(2021.05)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!