キジしろ文庫

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グレッグ・ベア「ブラッド・ミュージック」

あらまし

 遺伝子工学の天才ウラムは、自分の白血球をもとにコンピュータ業界が切望する生体素子を完成させた。だが、会社から実験中止を命じられたウラムは、みずから創造した“知能をもつ細胞"を捨てきれずに、体内に注射して研究所からもちだしてしまった……この新種の細胞が、人類の存在そのものを脅かすことになるとも知らずに! 気鋭がハイテクを縦横に駆使して新たなる進化のヴィジョンを壮大に描き、80年代の『幼年期の終り』と評された傑作SF(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 近頃、高齢者へのコロナワクチン接種の予約殺到、急きょの大規模会場設置など、マスコミがさらにその騒動を煽りたてることで、自治体や高齢者に心理的負荷がかかっています。それは、短期・長期の副反応や効果の有無(無接種によるコロナ発症と接種による現状の治験での副反応等のリスク)など聞く耳持たずに、やみくもに行動に移しているようです。まずは、ワクチンクーポン券添付の注意書きや問診票をよく読んで、判断することから始めなければなりません。

 そんななかで、読んだ本書は、上記「あらすじ」をキッカケに、人為的偶発的につくりだされた新細胞による感染が、爆発的に北米大陸に進行するというものです。しかし、そのテーマとしては、人類が「思考する新細胞」へ変容(メタモルフォーゼ)する世界、リアルからのヴァーチャル化・情報化への進化を描いています。

 以下、偏見まじりのポイントとコメントを、まとめてみました、参考まで。

・人間ボディに住んでいた個々の意識や思考が、感染によって、ひとつの新細胞という気分もすぐれ健康的で素晴らしい住まいへと、お引越しをします(競争原理によって旧細胞敗退)。その結果として、不要な人間のボディは溶けて(分解・吸収)しまい、たくさんの新細胞からなる膜や多面体・大渦巻といったグロテスクな形態に変状します(合成)。

・新細胞は、自己学習と自己変造を繰り返し、宿主に危害を加えることなく頭脳に入り込み、その知性を高めていきます。

・お引越しは、感情・意識や思考、記憶を記号・信号化したものだけです。ヒトの細胞ですので代謝と増殖を繰り返します。生殖行為もないので、複製と編集・増殖がとても早く、新細胞内で家族や知人もすぐに会うことができます。

・新細胞では、全ての人間の思考や意識をひとつに取り込み、重合一体化・更新・複製しています。自分は大勢いて、争いやイジメもなく楽しそうです。しかも、このような人類の英知を集約した新細胞では、内部宇宙理論が構成されています。

 たとえば、種として潜在し蓄積されてきた記憶とその再構成・保存といった、時間の存在しない永久世界や、観察と理論化による多量の情報が時空に影響し、現実を定める(ソ連の核攻撃機を墜落させる)などといった、リアルとは隔絶した、歪みいびつな観念的世界です。

 それは、ひとりよがりの虚構の世界であったり、また単なる無機質な電気信号の明滅事象にすぎなかったりと思う一方で、あるいは、今現在の自分たちが求めていたり、考えていたりするところもでもあるのかな、とも思いました。

・また、外因の病気、水・食料不足、風雨雪寒暖・地震火災・隕石や他の動植物危害・ウィルス感染、暴力などの影響が少ない分、新細胞では、より自由で対等な対人関係は築けやすいような気がしました。

・なお、最後に、新細胞はあらゆるものの情報化と極小化が進み、リアルを不要とする、目にすることのできない実体のない存在となります。

(2021.05)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!