キジしろ文庫

ミステリーや文芸小説、啓発書などの感想やレビュー、エンタメや暮らしの体験と発見をおすすめ・紹介!

小林武彦「生物はなぜ死ぬのか」

あらまし

 加齢による肉体や心の変化は、やむを得ないことだとわかっていても、ポジティブに捉えることはなかなか難しいものです。若い頃を懐かしく思い、老化した身体を愁うこともあるでしょう。身近な人の死に直面して、悲しみに暮れることもあるでしょう。老化は死へ一歩ずつ近づいているサインであり、私たちにとって「死」は、絶対的な恐るべきものとして存在しています。そこで、こんな疑問が頭をよぎります。

 なぜ、私たちは死ななければならないのでしょうか?

 生物学者の私から見ると、生物の仕組み、ひいては自然界の仕組みは、偶然が必然となって存在している―つまり「たまたま」だと思っていたのが、「なるほどね」と思えることばかりなのです。―「はじめに」より                (新書裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★★★星5

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書からは、ヒトは躾と教育によって育て上げられ、恋愛・結婚を経て家庭を築き、協力して働くなか、子をなし今度は育て上げ、家庭を築いてもらう。そして55歳からは、身体が言うことをきかなくなりはじめ、病気になって必ず死ぬ。生物学からすれば、このような繰り返しによる「変化と選択」、「作っては分解して作り変える」といった、進化のなか起きてきた、ヒトは利他的な生き物であるという、46億年をかけた重厚でリアルな摂理があることを、あらためて教えられました。

 それは、進化にとって不可欠な、多様性や個性・自由を重んじるということは、自分だけは助かろう・自分だけは損をしたくないといった身勝手さやわがままな私利私欲(要らぬ嫉妬や憎悪・絶望を生み、ひいては内輪もめや仲間割れを起す)・利己的とは大きく異なるものだ、というように感じました。

 また、利害と権力・名誉を求め、人を出し抜き・勝ち抜くなど自己への執着をもち続ければ、現実、望まない死を迎えることになるのかな、と思います。

 では、具体にどうすればいいの?と言えば、たとえば以下のようなことなのでしょう(以下、「道をひらく」松下幸之助 自分の仕事、より抜粋)。

 「どんな仕事でもそれが世の中に必要なればこそ成り立つので
 世の中の人々が求めているのでなければ
 その仕事は成り立つものではない。・・・

 だから、自分の仕事は
 自分がやっている自分の仕事だと思うのはとんでもないことで
 ほんとうは世の中にやらしてもらっている
 世の中の仕事なのである。
 ここに仕事の意義がある。

 自分の仕事をああもしたい、こうもしたいと思うのは
 その人に熱意があればこそで、まことに結構なことだが
 自分の仕事は世の中の仕事であるということを忘れたら
 それはとらわれた野心となり、小さな自己満足となる。・・・

 大切なことは
 世の中にやらしてもらっているこの仕事を
 誠実に謙虚に
 そして熱心にやることでである。
 世の中の求めに、精いっぱいこたえることである。

 おたがいに、自分の仕事の意義を忘れたくないものである。」

 

 さて、本書の老化について、以下、浅薄な理解力・知識力と独断でまとめたものです、参考まで。 

 私たちの身体では、細胞内のDNAやRNAによって、脳・臓器・骨・血液・皮膚が合成され、代謝・運動・神経・免疫機能を果たすことによって、健康な毎日を送れています。

 この心身の機能維持は、それぞれ分化した細胞によって行われてますが、脳・神経・心臓を除き、皮膚で4週間、最長の骨で約4年で、全ての細胞の入れ替わりがあったうえで、行われています。

 そして、この細胞の入れ替わりを促したり、抑えたりするところで、やがて老化が始まり死に至ります。さらに、その原因は、DNAの経年的コピーミスやキズの蓄積にあるということです。

①第一段階

 分裂を繰り返してきた古い細胞(体細胞)には、DNAのコピーミスや欠け、キズ(紫外線による強い結合、放射線による切断、食物などからの化学作用・炭水化物からエネルギーを取り出す際の副産物である活性酸素による酸化=サビさせるなど変質)を蓄積してくるため、50回を限度にダメにします。

 この理由は、ダメにしないと、免疫細胞などの機能不全や悪性(ガン)化を引き起こしてしまうからです。

 なお、このダメにした細胞が排除されないでいると、炎症反応を引き起こして、臓器の機能低下をさせ、糖尿病・動脈硬化・ガンなどの原因にもなっています。

②第二段階

 ①の際に、減ってしまう体細胞を補充する細胞(幹細胞)がいます。幹細胞も、全く同様にして、DNAのコピーミスやキズの蓄積をするため、そのはたらきを、次第に弱めていかざるを得ません。そして、この供給低下によって、全身への影響(キズが治りにくい、感染症にかかりやすい、内臓機能低下などの老化)が始まります。

③第三段階

 さらに、55歳以降では、ついに幹細胞のキズなどの蓄積量が抑制の限界を超えてしまうことで、変化した遺伝情報に伴う異常な細胞が急増し、ガンをはじめ、さまざまな病気を起させ、衰弱化し死に至ることになります。

(2021.05) 

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!