キジしろ文庫

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カール・セーガン「コンタクト」(下)

あらまし

 ヴェガ系惑星から届いた〈メッセージ〉解読のため、世界中の知識が総動員された。やがてそれはある機械の設計図であることが分った。再び全世界の協力の下で作り上げられたその〈マシーン〉に乗って、エリーたち5人の地球人代表が、ヴェガに向けて旅立つことになった―。宇宙の先進文明との接触を主題にして、最新の科学情報を基盤に、著者の卓抜な空想が展開する雄大叙事詩。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

  2/2です。まとめてみました、参考です。

 (1)メッセージ解読の鍵がつかめず、その作業が難航するなか、信号は4万ページから1万ページへと反復が始まり、欠落が埋まります。エリーは、その反復確認に使用された文脈認識チップ開発者(民間発明の国有化を批判し、選択の自由を求め、マシーン建造の意志を示しました。なお、バビロンを復元した夢の王国を経営中。)の助言である、位相変調によって、信号中の鍵を読み取ることができたことで、マシーンの建造が可能になりました。そしてマシーンの乗員選考が進む中(エリーは、外れてしまいます)、伝道師と再び対面です。

P75 「あなたは・・・宇宙で迷子になっているような気持ちは感じることはありませんか?神がいないとしたら、あなたは何によって御自分の行為、行動を決められますか?ただ、逮捕されないために法律を守るだけですか?」

「あなたは迷子になることを心配しているのではないわ、パーマー。あなたは、人間が中心でなくなることが心配なのよ。あなたにとっては、人間こそが天地創造の理由でなくてはならないから。わたしの宇宙にはいろいろな秩序があるわ。重力、電磁気、量子力学、超統一理論。いずれも法則の上に成り立っている世界よ。行動について言えば、人間にとって何が一番の利益かを考えればいいことではないかしら。人類全体として」

「それは心暖まる、尊い世界観ですね。人の心に善があることを認める点ではわたしもあくまで賛成ですが、しかし、神の愛がないところで、どれほど残虐な行為が働かれたでしょうか」

「神の愛があったにしても、同じことが言えるわ。(中略)あなたの信仰では、人間はみな子供で、子取り鬼が来ますよと言っておどかさないと、すぐ悪さをするという考え方なのでしょう。だから、神を信じて道徳を守るように教えるのね。それ以外に人間を律する法術はないみたいに。罪を犯せば警察が厳しく追及するし、警察の目を逃れても、全知全能の神の目はごまかせないから、天罰覿面というわけでしょう。でも、それはずいぶん人間を舐めた話だわ。(後略)」

P77「わたしに言わせれば、あなたがたは科学が提出する証拠を理解していないのよ。宗教上、真理とされてきた因習的な知恵が虚偽だとしたら、そんなものが人間にとって何の役にたつのかしら?あなたがたが、人間はもっと大人だということを真剣に考えたら、お説教の中身も変わるはずだわ」

「意識というものについて考えていただきたいのです。例えば、今この瞬間、あなたは何を感じていますか?頭の中を、何十億という小さな原子が飛び回っているのが感じられますか?生物学的な仕組みを突き詰めた先の、科学のどこに、子供が愛の本質について学ぶべきものがありますか?つまり・・・」

(2)マシーン建造が、莫大な費用と年月を要するものの、新技術・新産業開発を目当てに航空宇宙・ハイテク産業が群がるなか、米ソ両国で建造、日本が部材一式の原理や構造研究を行うことで開始されます。そうした中での、マシーン爆破事件の発生と乗船予定者の死亡・代替のエリーの乗船が決定します。しかし、エリーは、醜い利己心に罪悪感を抱きます。さらに、終末機械論といった世間の逆風、建造再開の遅れ、危険の懸念などによる米ソの建造挫折に対して、部材試験→組立を組立→部材試験に変更することを日本で行うことで、その始動にこぎつけ、エリーは、気を取り直していきます。 

(3)そして、マシーンは始動しました。マシーンをブラックホールが飲み込み その中心にあるはずの因果律が破られる特異点を越え、ヴェガとその軌道上の電波望遠鏡ブラックホールに遭遇、さらにジャンプを重ねたのちに、宇宙船のドッキング・ポートを持ったステーションに到着しました。しかし、そこで降りたところは浜辺でした(後進世界がメッセージとマシーンによって時空に皺を寄せ、先進世界がトンネル(ビッグバン時の原始のブラックホール)をつなげたもの)。エリーは、異星人との対面を不安に思い、逡巡するその前に、亡き父(異星人)が現れます。

・エリーらが、浜辺での睡眠中に知識や記憶、感情などをコピーをし、情報収集することによ因果律構築が、この件の直接の目的でした。

・あらに、宇宙が膨張しても、銀河系(星、生命)が生まれないことから、その荒廃を避けるため、宇宙の再開発・改造工事を、6億年前から共同で実施してきた、その一環が今回の件の背景ということでした。

・なお、この異星人も、既にいなくなってしまった銀河系に栄えた文明を引き継いだ、管理人でしかないとうことでした。

 ・ちなみに、地球の評価としては、組織・経済・未来予測など破綻も不思議ではないが、適応力に優れている、とういうことでした。

(4)マシーンの稼働は20分、材質変化はあったものの、その確実な証拠もなく幻影や狂気とも言えるエリーらの報告は、業者との癒着を伴ったアーガス計画の維持のためのでっちあげ(マシーン始動と同時にメッセージの途絶は、エリー到着後の停止に26光年かかるので・・・)と、米政府にとらえられてしまいます。この結果、マシーンは、いっさい機能せずと公表され、プロジェクトは凍結されます。

(5)失意にあったエリーは、異星人の父すらも驚異として感じていた、円周率に隠された宇宙の知性を解き明かすことで(幾何学図形)、失っていた自分を取り戻します。

 (2021.01) 

では、また!