キジしろ文庫

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デニス・E・テイラー「われらはレギオン3 太陽系最終大戦」

あらまし

 アザーズ侵攻からパヴ人の星系を守るための戦いは敗北に終わった。しかもその戦闘で、敵に地球の位置を知られてしまう。つぎに狙われるのは地球だ! ボブたちは必死で対抗策を考えるが、対処しなければならない問題はほかにも数多くあった。ポセンドンの独裁者政権、ブラジルの複製人メデイロスの攻撃……そんななか、ついに強大なアザーズの艦隊が襲来する。地球防衛のために集結した500体のボブは……3部作、堂々完結!(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書を読んで、全体として「人(AI)が人(AI)を裁く」ことが決してあってはならないこと(干渉できない・介入できない、支配も従属もしない)、が徹底されていることが、自由闊達な意思や行動につながることなのかと、思いました。また、それが、ボブたちの旅立ちだけでなく、親しい友人や家族の死を受け止め、前に進んでいくことができるのだとも、感じました。以下は、ボブたちに限ってまとめてみたものです。

①AIが、人間や異星人同様に、ひとつの対等な独立した存在として認知されること。

②AIは、ロボットのように人間に仕えるだけでない、自由意思を持っていること(干渉しない)。

③それゆえ、AI、アザーズ、別れ、死など試練や苦難といった不条理を乗り越えることができること。

 そして以下は、構成や順序立てが支離滅裂、内容も発散気味ですが、3/3をとりまとめてみたものです。

(1)ボブ(人型アンドロイド):エリダヌス座デルタ星系

・移住者達から、繰り返し狩りの獲物の略奪や暴力行為などの被害を受けるなか、デルタ人家族としてなじんでいきます。その移住者たちへの非情なまでの憎しみを覚えたボブは、脅しをかけたあと、アルキメデスが人質となった闘いにくわわります。槍の加工格差が問題でしたので、それを教えることで、和平がなされ交易もおこり始めます。

・そして、長年の無二の親友アルキメデスの死を機に、デルタ星系を去ります。

P368「たしかに、ぼくたちはもう、生身の体を持っていない。だけど、それでも生きているんだ。友達をつくるし、嘆き悲しむし、いまだに恋に落ちるらしい・・・それでいいんだ(後略)」

(2)マーカス(人型アンドロイド):ポセイドン

・入植者評議会による全体主義的な専制圧政(住む場所や仕事を強制する法律など)に、入植地のひとり立ちを願い、反対派に力を貸すこととなります。武力革命を避けるべく、政府が管理しない、再出発のための空中都市を集会で披露しますが、逆に攻撃対象となってしまいます。

P76「マーカス、あなたは一匹狼なのよ。(中略)それにあなたは権力を追い求めなかった。だけど、権力をほしがる連中もいるの。そしてそういう連中たちは、ほかの誰かに権力をおよぼしたがる。できたら大勢のだれかに。評議会から権力の対象を奪うというのはーそれこそあなたがようとしていることよー宣戦布告に等しいの」

・空中都市入口の武力封鎖などあるなか、反体制派への逮捕状やマーカスの惑星開発計画の解任が出されます。さらに、評議会治安部隊を原料備蓄へ配備し、ついにボブのおとり宇宙船を破壊したうえで、評議会は、空中都市破壊の声明を発表します。

・そして、評議会宇宙船からのミサイル攻撃により空中都市が撃墜され、大勢が命を落とします。マーカスらは、宇宙及び地上での反撃に転じますが、予想を裏切るボブネットを使った宇宙船からの地上都市攻撃にあいます。しかし、バスター攻撃により逃走する宇宙船を追い、実権者を拘束できたことで、ポセイドンの社会が変わっていきます。

(3)ハワード(人型アンドロイド):ヴァルカン

・子供たちの思い(ハワードは機械であり、母を惑わせている。母には人間という種にとどまってほしい)があるなか、ブリジットとの距離が縮まります。

・わたしの親しい友人と語る遺書をくれたバターワースの死をキッカケに、不死のボブたちと、死のある人間とに、大きな溝があることに気付かされます。

P81「で、世界征服は考えてないのかい?きみたちならできるだろ?優位を占めてるし、いろいろな武器を持ってるんだから」

「なんだってみんな、世界を征服したがるんだ?わけがわからないよ。だって最低の仕事じゃないか。まっぴらだ。ぼくたちでアザーズの対処はするけど、それ以外は、きみたちが自分でやってほしいね」

P83「わたしが心から願っているのは、あなたが目新しいものじゃなく、見慣れた存在になることなの。あなたがいったように、重度の障害を持ってる人に。みんなに、ただの人だとみなされるようになってほしいのよ」

VRを体験してもらうなどするなか、ブリジットは急死します。ただし、その遺志により停滞状態になります。子供たちが解除の訴えを起こし、敗訴決定に伴い病院での実力行使(停滞ポッド停止)をしますが、その直前にドローンによるスキャンを行います。

・こののち、ブリジットは再生されます。ボブネットに参加し、仲間をつくり、人類のために浮遊都市をつくり、アンドロイドとして暮らします。その後、息子の結婚や娘のロミュラス移住など、ハワードは、良きにつけ悪しきにつけ、家族としての問題につきあいます。さらに、事故で亡くなる子供たちを養子にとり、父親となっていきます。

 (4)ビル:エリダヌス座イプシロン星系

・自殺ミッションになりかねないボブの複製に対するうしろめたさを共有し、GL877系に向かうイカロスたちを見送ります。

・偶然訪れていた、エリダヌス82番星系(日本とカナダが入植)のマックが、自動工場略奪をしようとしたブラジル船により襲撃されます。しかし、マックのキューブは確保、プリンターを分解移送することで難を逃れます。さらに入植地を爆撃しようとするブラジル船に、地上プリンターでつくった蚊駆除機とバスターといった移住者と協力した攻撃をし、最後に、そのレプリカント・マトリクスを生け捕ろうとしたところで、ブラジル船側は自刃しました。

アザーズからの地球防衛のための戦艦千隻や核3千発、ボブたち500人の戦力を集めますが、アザーズはくじゃく座デルタ星系遠征隊をおとりにし、全戦力を地球に向けていることを探知します。そのようななか、ハーシェルとニールが地球に到着します。しかし、600万個の停滞ポッドが不足しています。アザーズの侵略に時間がないことから、また、余分の移送プレートがあることから、600万人を10か所で直接船に詰め込みはじめます。アザーズのビーム発射を避けながら。

(5)ライカー(人型アンドロイド):ヴァルカン、地球

・ロミュラスにいる、ボブ親族のジュリアが動脈瘤が原因で亡くなり、哀しみます。その際、息子から、レプリカント化は、人が交換可能な歯車となった永久の強制労働という認識が一般にはあることを知らされます。徐々に、これら親族との隔たりが生じてきます。

・現状、100万人を移送しましたが、残る1400万人の移民には560年かかります。このため、停滞ポッド(完成まで50年)を提案するも、その完成までに半数が亡くなり、半数が目覚めるめどのないものより、30万人が助かる現スケジュールを継続することになります。

(6)ハーシェルとニール

アザーズの遺棄船2隻を調査、損壊の小さい1隻にある、新技術電源ユニットを調査し、再始動させます。これにより、地球の停滞ポッドの材料と入植船として使えることとなります。

(7)最終大戦

・第一段階:奇襲攻撃、第二段階:核使用、第三段階:高速での爆発により、核が放射する周波数を高めることで、ギリギリ勝利します。第四段階:イカロスたちによって、エリダヌス座イプシロン星の二つの惑星をGL877に激突させ、その核融合反応により、ダイソン球を滅ぼします。

(2020.12)

では、また!