キジしろ文庫

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デニス・E・テイラー「われらはレギオン1 AI探査機集合体」

あらまし

 ソフトウェア会社の社長兼プログラマーのボブ・ジョハンスンは、SF大会の会場で交通事故にあい死亡した。目覚めてみると、なんと117年後、キリスト教原理主義国家となったアメリカで、恒星間探査機の電子頭脳になっていた!はからずもほぼ無尽蔵の寿命と工業生産力を手に入れたボブは、人類の第2の居住地を探して近隣の星系を探索し、つぎつぎに新発見や新発明を成し遂げていく!傑作宇宙冒険SF、3部作開幕篇!(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

  イオンエンジン搭載探査機のはやぶさ2は、その打ち上げ6年後のいま、小惑星リュウグウからのサンプルリターンに成功、さらに、ふたご座流星群が夜空に降り注ぐなか、2031年の到着を目指した次の小惑星探査ミッションに出発しています。

 また、既に実用しているプレデターなどの無人戦闘機やドローンといったリモート、AI、ロボット化などの技術進歩には隔世の感があります。

 他方、コロナ禍にあっての、遺伝子情報を基にした人工合成によるmRNAのワクチン承認など医薬・生物分野での先端研究では、そのスピードには目をみはるものがあります。

 本書に、「同居するには、銀河系は狭すぎる」とありましたように、自由な思考や行動を求めることで、たとえば境界条件を超えるような、社会の飛躍や創造をつくりだす技術の進歩に至るのだろう、と思いました。

 さて、以下は3分冊全体の1/3段階で、サラリとまとめたものです。参考まで。

  (1)ソフトウェア会社を経営するボブは、その希望により交通事故後冷凍保存されます。しかし、その後、キリスト教国家の成立により競売にかけられてしまい、本人のレプリカントである、AI(コンピュータ・プログラム)として再生してします。

 さて、ボブは、国の所有物として、自己複製しながら他星系を訪れる恒星間探査機の制御が使命となります。しかしながら、居住可能な惑星の領有競争に敵対する国内外の、襲撃阻止や爆破に伴うバックアップからの復元、ミッション達成のための自由意思を制限するための自爆装置の無効化を受けるなか、宇宙船を緊急発進させます。その後、さらにブラジルによるミサイル攻撃を受けながらも、エリダヌス座イプシロン星に旅経ちます。そして、抹殺のための仕掛け爆弾やソフト上の罠を取り除くなか、地球上は核を用いた各国間の全面戦闘状態に突入し、他方、ブラジルもミサイル搭載型の探査機2機でボブに追随します。

(2)ボブは、エリダヌス座イプシロン星に到着後、ブラジル探査機1機を撃墜します。その後、技術支援により居住可能なEE2を発見し、宇宙ステーション建造とボブの製造に取り掛かり、その状況報告と入植準備をします。ボブのクローンとして誕生したライカー(産みの地球人類の確認)、ビル(留まって宇宙ステーションなど拡張基盤づくり)、マイロ(エリダヌス座オミクロン2星)、マリオ(みずへび座ベータ星)、ボブ(エリダヌス座デルタ星)ですが、当初の義務を果たしたことで、それぞれがそれぞれの自由意志に基づき行動を開始します(それぞれ、オリジナルボブの性格に強弱がついています。これ以降、ボブクローンが量産増殖されていきます。)

 ①マイロ:生物の生息するヴァルカンとロミュラスを発見→エリダヌス座82番星系でブラジル船に撃墜される→さらに、核兵器を使ったブラジル船攻撃により7名のボブが惨敗。

 ②ライカー:ブラジルによる宇宙からの中国への小惑星攻撃を確認し、太陽系軌道のスィングバイを利用しての焦土作戦をとるブラジル船団の撃破→核と小惑星激突後の生き残りの人類であるバターワースらと交信、入植船(1万人用)の造船開始→生存者の捜索後1500万人の移民のための時間や食料に課題があり、人類の醜い優先順位争いが始まる(設計国、動植物貯蔵庫、服従パスワードや子孫)。さらに自発的絶滅を信望する過激派集団も発生→増船とドーナツ農場での葛栽培の後、2隻を出発。

 ③ボブ:知的生物発見(デルタ人のアルキメデス)→ニセゴリラによる絶滅の危機から火打石(握斧)を与え、武器として利用、バスターでの撃退、火打ち石の産地への誘導など天空神となって介在。

 ④カルヴィンとゴクウ:アルファ・ケンタウリ系でブラジル船と造船所を破壊。

 ⑤ライナス:インディアン座イプシロン星系にて、オーストラリアの探査機を救助。

 ⑥ビル:アンドロイド開発着手。

 ⑦マリオ:強力な兵器による異星人の皆殺しと金属資源と死体略奪の痕跡の発見。

 (2020.12)

では、また!