キジしろ文庫

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カート・ヴォネガット・ジュニア「猫のゆりかご」

あらまし

 わたしはジョーナ。『世界が終末をむかえた日』の執筆準備にとりかかったのは、キリスト教徒だったころのこと。いま、わたしはプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいて、禁断のボコノン教を奉じている。ボコノン教に入信したそもそものきっかけこそは、ほかならぬ未完の大作『世界が終末をむかえた日』なのだった。 シニカルなユーモアに満ちた文章で定評のある著者が、奇妙奇天烈な世界の終末を描いたSF長編。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 まずは、本書を読んで、思い描いたことです。

・貧困や疫病、災害などの貧しさや危険から豊かな暮らしを求めるために、宗教や芸術などには重きをおかず、叡智を集めて科学技術と産業の発達を進め、また、そのように自立するための自由や平等の文化を育てていかなければなりません。

・しかしながら、そうは言っても、一朝一夕にはうまくはいかない現実があります。また、豊かな精神世界によってもたらされる感性は、それ自体だけでなく、相互に関わることでも、更なる飛躍や創造にもつながると思います。

・そのようななか、盲目的に暴走する科学技術があるならば、小さなアクシデントが発生することで、いとも簡単に世界の終末を迎えてしまいます(核など)。そして、残された人間には、不毛の地が残るのみとなります。

・このような不幸な結末であっても、これも自由な選択の結果のひとつなのでしょう。あるいは、一人ひとりにとってみれば、人々が翻弄され、不条理のはたらく運命を受け入れ、一貫性のある超越的な存在とそれを前にする無力なはかないものが、人間と考えなければならないのでしょう。

・さて、リアルの世界に伴うリスクや閉塞感など、悲観しがちになってきてしまいましたが、とどまってばかりはいられません。目を転じれば、IPS細胞などの再生医療レプリカント化、サンプルリターンなどもあった宇宙開発など、世の中にはやらなければならないことはまだたくさんあるのだと思います。

 以下は、本書をおおまかに、取りまとめてみたものです。参考まで。

①本書は、主人公が、世界が終末を迎えてしまったあとでも生き残り、その顛末の記録です。

②主人公は、広島に投下された原子爆弾の研究者について、執筆のための取材として子供たちや研究所などで、その奇人変人ぶりを聞くなかで、微量で瞬時に分子構造を変えることで全てを固形化(凍らせる)アイス・ナインという物質を知ります(が、実は密かに完成され、3人の子供たちに分け与えられていたことを、後からわかりました)。

③次に、主人公は、サンロレンゾ共和国にいる長男を訪ねます。その飛行機の中で、兄の婚約パーティーに向かう姉弟と出会います。サンロレンゾは暮らしが貧しく、科学を信奉し、宗教(ボコノン教)を否定しています。主人公らを歓迎する大統領”パパ”モンザーノがそ式典の最中に倒れてしまい、次期大統領に長男を指名します。

④しかし、長男は世界一美しい”パパ”の養女含めて主人公にその座を譲り、主人公は成り行き上同意します。大統領就任を兼ねた航空ショーのさなか、”パパ”は臨終の儀式を内心信仰していたボコノン教で行い、長男が渡して隠し持っていたアイス・ナインを、アッサリと飲み自殺します。さらに、編隊の激突により海に投げ出された”パパ”によって、世界じゅうがが凍りついてしまいます。

(2020.12) 

では、また!