キジしろ文庫

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アーサー・C・クラーク「幼年期の終り」

あらまし

 人類が宇宙に進出したその日、巨大宇宙船団が地球の空を覆った。やがて人々の頭の中に一つの言葉がこだまするー人類はもはや孤独ではない。それから50年、人類より遙かに高度の知能と技術を有するエイリアンは、その姿を現すことなく、平和裡に地球管理を行っていた。彼らの真の目的は?そして人類の未来は?宇宙知性との遭遇によって新たな道を歩みだす人類の姿を、巨匠が詩情豊かに描きあげたSF史上屈指の名作。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

  本書では、人知の及ばない高度な知能と文明の力をもったオーバーロード(上帝)が、人類を、オーバーマインド(上霊)の公僕となって終末に向けて導きます(人類は丸め込められざるをえません、が、その後、信頼関係も生じてきます)。それは、

①人類社会を戦争や飢餓、貧困、病い、差別(宗教や芸術の衰退)のないユートピアへと誘導・快楽を堪能することで、他の惑星管理もできるほどの科学技術などの進歩をつき進めてしまい、銀河系宇宙に横たわる力により、人類や地球が滅ぼされてしまうことから守り、

②さらに、人類のもつ潜在能力からメタモルフォーゼ(変態)によって生じる、生命を超越した地球の多様性ある知的存在の、人類独力ではなしえない誕生や成長を手助け・守り(幼年期の終り)、

③その結果、オーバーマインド(上霊) への吸収・一体化を見届けるためでした(人類と地球の終焉)。

 これを、侵略や支配とその抵抗、さらには歴史改変といった見方だけでなく、計り知れないオーバーマインドの真意・情け容赦のない現世界のリセットなど、キリスト教などと似たような世界観を提示する一方で、宇宙・科学・進化などによって紡ぎ描く、神とは別の不可知な絶大な力の存在とそれを信じ、乗り越えていく人類を見せつけられるさまは、心を揺るがせてしまう大きな衝撃のあるものなのかもしれないと思いました。

(2020.09)

では、また!