アイザック・アシモフ「ファウンデーションの彼方へ〈下〉 ―銀河帝国興亡史〈4〉」
あらまし
滅びたはずの第二ファウンデーションは実は生き残っており、銀河の歴史を蔭で操作しているのではないか?青年議員トレヴィズの大胆な推理は、第一ファウンデーションを震撼させた。ただちにトレヴィズは第二ファウンデーション探索の任務を与えられ、考古学者ペロラットと共に外宇宙へ送りだされる。だが、そこで見つけたものは…?人気シリーズをさらに壮大な未来史へと発展させ、ヒューゴー賞に輝いた傑作長篇。(文庫本裏表紙より)
よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★★★星3
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
①第二ファウンデーションの観測者のコンパーから(市長は、それと知っていて手先として利用していた)、コンポレロンに伝わるという、地球はシリウス星区にあるが、帝国反撃のための超精神を創ったことで核と放射能による死の惑星となった、ということを聞きつけます。しかし、コンパーを第二ファウンデーション人と怪しむトレヴィズは、シリウスには行かず、セイシェルに引き続き留まります。
なお、コンパーは、優れた直観力の持ち主であるトレヴィズを発見し、ジェンディバルの指示により、トランターへ送るためのトレヴィズ追放を作り上げていましたが、第二ファウンデーション捜索に対する、友人としての警告をしていたものでした。
②次に、クィンテゼッツ教授秘書から、地球(ガイア)は誰も行けないハイパースペースにあることを聞きます。他方、教授からは、セイシェル(ミュールの時に中立主義となった(反ファウンデーション))の伝承として、地球からの銀河系への探検と植民のなかで使われたロボットが席巻したことで、脱出した地球人が創設したのがセイシェルであり、残ったロボット世界は死滅(地球は不明)したことを聞いたうえで、夜空の五角形の星と中心にある暗い星がガイアであり、帝国総督やセイシェルが征服に失敗したこと、ミュールすらも近づかなかったことを聞き出します。
③同行のペロラットへのセイシェルからの資料提供という刷り込みがあったもようですし、また、市長らからの注意を既にひいてしまったにもかかわらず、第二ファウンデーションかもしれない?ガイアへの誘導がなされているようです。しかし、トレヴィズは、その直観力からガイアを目指します。
(2)ジェンディバルとノヴィ
コンパーからの報告によって、ジェンディバルは、現地指揮を取るべく、トレヴィズをセイシェルに留め置かせるよう指示し、飾り気のない滑らかな精神の持ち主ノヴィとともに、セイシェルに向かいます(第一ファウンデーションの物理力を凌駕して、諸世界を支配し安全のために)。
(3)ブラノ市長
第二ファウンデーションを突き止め、新型艦隊によって撃破することで、プランを否定し、第二帝国樹立を目論む拡張主義のブラノ市長は、これまでアンタッチャブルだったガイアとセイシェルへ自ら出動します。そして、ガイア、第二ファウンデーションのトランターの始末をつけようとします。
(4)ガイアにて
三者三様、否が応でも未知なるガイアへの緊張と不安が高まります。しかしながら、トレヴィズらがガイアでまず接触したのは、ブリスという23歳女性(人間)でした。
・ミュールはガイアに生まれたが、許可なく出ていった。
・すべての個別の有機体・物質が一つの大きな高次の集団意識を共有しているのが、ガイアであり、たとえば、ブリスとはわたしであり、われわれでもあり、ガイアでもある(今回の案内人としての役割分担をしている)。時間的には、死によって循環する(一種の魂の転生)。
・人間保護に息苦しさと堪え難さを感じたことから(テレパシーや思考モニターもできる)、ロボット支配から脱し、自由に対する自らの力量を見定めるため、ロボットのない世界を開拓し、ロボットからテレパシー技術を習得したのがガイアでした。
・そして、現在、滅亡の危機に瀕しています。
(5)三すくみ
ジェンディバルは、第一ファウンデーションの精神作用能力搭載型の戦艦対策としてトランターからの総合ネットワークを準備します。一方、ブラノ市長の戦艦が、刻々と接近します。これに伴い、戦艦には精神遮蔽装置が装備されていることがわかります。一触即発のなか、どちらが勝ってもプランの崩壊を招くこと、謎のガイアを前にしていることから、休戦協力しガイア占領に向かいそうにもなりますが、しかし、同乗のノヴィがガイアとしての精神フィールドを使って、ブラノ市長を抑え込んでいた、ジェンディバルを抑え込み、三すくみとなります。
(6)ガイア(ノヴィ)の見解と最終決断
第一ファウンデーションのテクノロジーの進歩と、行動主義に傾く第二ファウンデーションの敵対関係は、まさに銀河系の歩むべき道を判断する時期であり、ガイアがその関係者たちをそろえたことによるものでした。そして、戦闘ずくめの軍事帝国か、計算ずくめの家父長的帝国か、それとも、あらゆるものが結合する超宇宙生命(ガラクシア)を目指すのかを、ガイアは提案しますが、トレヴィズの直観力に最終判断を委ねます。
最終判断により、危機は回避され、ブラノ市長は、帝国主義からセイシェルとの通商条約締結へ、ジェンディバルは、事態を処理したつもりで第一発言者となり、ノヴィはガラクシアの変化が始まるよう、それぞれが帰っていきます(最後に、トレヴィズは、ブリスをガイアを監督(世話)するロボットであると疑います)。
(2021.03)