キジしろ文庫

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アイザック・アシモフ「ファウンデーションと地球〈上〉 ―銀河帝国興亡史〈5〉」

あらまし

 第二ファウンデーション捜索の任務を帯びたトレヴィズは、その途上で、惑星全体がひとつの精神を共有する超有機体ガイアを見出した。トレヴィズは人類の代表として、銀河の未来をガイアに委ねる決断をくだす。だが、その選択は果たして正しかったのだろうか?彼の「直観力」は告げていた。すべての答えは人類発祥の星、地球に隠されていると…かくてトレヴィズは自分の決断を裏付けるために、地球探索の旅を開始した。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 1/2です。なので、コメントなどは次回にまわし、トレヴィズが決断した、(ファウンデーションのテクノロジーや精神工学ではなく)心と個性を共有し共通意識をもつ超有機体ガイアについての長短、特徴などを中心したまとめです。

(1)ガイア

・緊急時の遮断以外にプライバシーなし

・多様な知性の分散・共有構造

・別々の体験の快楽すべてを共有できるよりよい歓喜の強烈な感覚の体験

・少数意見者の社会変革などの内部混乱に伴う限界(超有機体自体の矛盾を引き起こす)。

・P51「あらゆる社会は、その住民を自らに適するように形成するといえるよ。その社会内部で意味のあるような習慣が発達し、それがすべての個人をその社会の必要性にしっかりと結びつけるのだ」「ぼくの知っているいろいろな社会では、人は反逆できる。変わり者もいれば、犯罪者さえもいる」

(2)コンポレロン

・ガイアはロボットによって形成され、ロボットを含まないようロボットは去って行った。

・P101「われわれにあって、ガイアにはないものはね、ブリス、多様性なんだ。もしガイアが拡大してガラクシアになったら、銀河系のあらゆる世界は強制的に温和なものにされてしまうのだろうか?同一性なんて、僕は耐えられないぞ」ブリスはいった。「もしそうなら、そして、多様性がそんなに望ましいなら、多様性が維持されるでしょう」「いわば、中央員会の贈り物としてかい?」

・P107 わたしたちは安定した安全な銀河系にしたいと熱望しているのよ。平和な繁栄したものにね。

・P126 真の交わりの弱々しい代用品を、強制的につくりだす人為的な慣行を利用しなければならないのは、疎外感の強い孤立人だけよ。

・P128「もし、正当だと自分が思う規則だけに従っていたら、すべての規則が成り立たなくなるわ。どんな規則でも、不当だと思う人が必ずいるはずですもの。そして、ごらんのように、もしわたしたちが個人的な利益を、あくまで追求したいと思えば、邪魔な規則は不正であり不当であると信じる理由を常に見つけることでしょう。するとどうなる?抜け目のないトリックは結局、無政府状態と災害をもたらすでしょうし、そうなれば、それは抜け目のないペテン師にもおよぶのよ。その人だって社会の崩壊を生き延びることはできないんだから」トレヴィズはいった。「社会はそんなに容易に崩壊するものではないよ。きみはガイアとして話している。そして、おそらくガイアは自由な個人の連合を理解できないのだろう。理性と正義に基づいて確立された規則は、状況が変化しても、その有用性を越えて容易に生き延びる。しかも、慣性によって力を持ちつづけることがありうる。その場合には、それらが無用になったとーいや、実は有害なのだとー宣伝することによって、これらの規則を打ち破ることが正しいだけでなく、有益にもなるんだ」「それではあらゆる泥棒や人殺しが、おれは人類に奉仕していると理屈をいいだすわ」「それは極端だよ。ガイアという超有機体の場合は、社会の規則に対して自動的な同意があり、それを破ろうなんて、だれも思わない。ガイアは植物的に生き、また化石化しているといってもいいかもしれないな。自由な連合にはたしかに無秩序の要素がある。しかし、それは新しさと変化を誘発する能力に対して、支払わねばならぬ代価なんだ。-全体的に見れば、納得のいく代価だよ」ブリスの声が一段階、上昇した。「ガイアが植物的に生き、化石化していると思ったら大間違いよ。わたしたちの行為、わたしたちの方法、わたしたちの見解は、たえず自己検証を受けるんですからね。それらは、理性を超越して、慣性で存続したりはしないのよ。ガイアは経験と思考によって学ぶの。それ故に、必要とあれば変化するのよ」「たとえ、きみのいうとおりだとしても、その自己検証と学習はのろいにちがいない。なぜなら、ガイアにはガイアしか存在しないからだ。この、自由社会では、ほとんど全員が賛成しても、かならず不同意の少数者がおり、場合によっては、その少数者が正しいこともある。そして、もしかれらが充分に賢くて、情熱があって、正しければ、結局はかれらが勝ち、未来において英雄になるーハリ・セルダンのように。かれは心理歴史学を完成させ、自分自身の思想で銀河帝国全体に対抗し、そして勝ったんだぞ」「かれが勝ったのはこれまでのところだけよ、トレヴィズ。かれが計画した第二帝国は実現しないわ。その代わりにガラクシアができるでしょう」「そうかな?」トレヴィズは陰鬱にいった。「それはあなたが決断したことよ。そして、あなたがどんなにやっきになって孤立人を擁護し、かれらの馬鹿になったり犯罪者になったりする自由を擁護しても、あなたの心に隠れたくぼみには何かがあるのよ。あなたが選択をした時に、<わたし/われわれ/ガイア>に否応なしに賛成しなければならなかった何かがね」

 以降、ストーリーをかいつまみます。

    コンポレロンは、厳しい規則を利用して(不法入国とみなす)、トレヴィズらの重力船を接収すべく、身柄拘束・脅迫・取引・買収をしかけます。しかし、トレヴィズから、地球探索の使命を告げられると、災いをもたらす忌避すべき(地球は、ロボットを持ったが故に、処罰者に罰せられ、存在していない。探索者は死ぬ。)不吉な迷信が信じられていることから、災い(復讐)を逸らすために、解放されます。

 そこで、紹介された、デニアドール談:人類発祥の地球からは、

①ロボットを伴った植民第一波(スペーサー、高度にテクノロジーを発展させ、長寿命化も成就、50あるうち三つの座標をもらう)⇒処罰者により処罰(ロボット依存により意欲喪失・弱体・頽廃化)される。

②ロボットを持たない植民第二波(セツラー)⇒銀河系占領、第一波を打ち破り、その後交流を途絶。

③ロボットがいた地球も死滅。

(3)オーロラ(一つ目のスペーサー世界)

 朽ちたロボットと廃墟、持ち込まれた人為的自然生態系のバランスが崩れた結果、狂暴化した野犬に襲われ、早々に撤収したことで、指導的知性の必要が身につまされます。

(4)ソラリア(二つ目のスペーサー世界)

 バンダ―なる全人のソラリア人(稔動力のような能力をもつ)とロボットの出迎えを受けます。

(2021.03)

では、また!