キジしろ文庫

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アイザック・アシモフ「第二ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈3〉」

あらまし

 設立後300年で、第一ファウンデーションは瓦解してしまった。ハリ・セルダンが予見できなかった人間、超能力を持つミュールに撃破されてしまったのだ。だが、もうひとつのファウンデーション、謎に包まれた第二ファウンデーションが残されていた。銀河系征服をもくろむミュールとそれを阻止しようとするファウンデーションの生き残り、両者による第二ファウンデーション探索が開始されたが・・・傑作宇宙叙事詩、第三弾!(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

(1)第六の危機

 騙し合い・裏のかき合いの果てに、つけこまれてしまう脇の甘さやスキ・弱みを見せるといった、避けられないリスクを最小化する対策などについて、全体のバランスを俯瞰し資源を投入する監理能力が問われそうです。以下、参考まで。

①第二ファウンデーションの第一発言者であっても、アウェイではミュールによって簡単に察知・殺害の危険性があるため、若く有能なチャニスを惑星カルガン(ミュールの世界連邦の本拠地)に潜入させます。チャニスは、ミュールからの第二ファウンデーションの探索の役を、囮となって演じ、ホーム?のタゼンダ、ロッセムまで、単独ミュールをおびき寄せることに成功します。

②他方、ミュールは、異能の力による自国内での支配下の精神への干渉に気付いており、チャニスに追跡装置をしかけます。そして、罠と知って、その後を追い、チャニスが総督(第二ファウンデーション)との見掛けの取引を行おうとしたところで現れ・異能力を働かせます。しかし、チャニスは、同行していた転向者のプリッチャー大佐を覚醒させ、味方に引き入れることで、時間稼ぎをしますが、ミュールの精神作用力によって、第二ファウンデーションの所在が、ロッセムであることを吐かせられてしまいます。

③そこへやっと現れた、第二ファウンデーションの第一発言者が、その所在は、チャニスへの感情手術による思い込みであることや、カルガンへの逆襲攻撃をはじめた事実を告げることで、ミュールが絶望感を抱き、その心が開いたところで、無事覚醒が行われます。

(2)第七の危機

  混迷の時代という苦難を乗り越え、帝国の再興に至る、そのような夢・理想・志しと目標・計画を信望し、また支えとして、迷わず諦めることなく邁進する。そうでなければ、困難に悲嘆・苦悩するなかにあっては、堕落や享楽・頽廃などの衰退に至り、創造や飛躍など人類・文化社会の発展や成長と幸福いった成果も望めないでしょう。

 3巻全体を通して、縄張り争いや小山の大将ごっこといった、なれ合い群れをなし・権力をふるい・他者を束縛支配する、安易な競争原理や自然淘汰正当化としての上下・優劣・強弱といった使役の対人的暗黙の契約が、前提条件として存在しています(モノゴトを対人関係に置き換える問題のすり替え、価値観の転換でもある)。

 そこで、このような功罪両面を生み出す、気まぐれな潜在する邪悪さ・利己的執着や欲望に対し、まず自覚・認識し、それに抗い、使いこなすことが大切なのでしょう(セルダンプランとは、第一ファウンデーションの物質文明と第二ファウンデーションの精神文明の時間をかけた融合のこと)と感じました。

 さて、以下は簡単なまとめです、参考まで。

 ミュール亡き後、第一ファウンデーションは、その残存者によってターミナスを復興させます。残存者である精神科学者ダレル博士以下4人のもとへ、仲たがいした同僚の紹介でやってきたアンソーア(第二ファウンデーション人)が、アナクレオンでの人工的な精神干渉事実を持ち込み、ミュール亡き後の侵入不可能なカルガンの神殿に関心を向けます。

 ダレル博士らは、セルダンプランを成し遂げるための、第二ファウンデーションによる誘導や監視があることを知っており、劣等感や嫉妬・憤怒や畏怖、逆に保護や援助・安堵感といった相矛盾する感情を抱きます(これに伴う文明退行の懸念や、第一ファウンデーションが、心理学を求め始めたこともあり、第二ファウンデーション人が憂慮する、プランのゆがみの発生)。しかしながら、自由意思や独立の阻害などの支配への嫌悪や敵意が強く、自尊心も高いため、第二ファウンデーション人の探索を始めます。

 この結果、ダレル博士らは、第二ファウンデーション人を捕らえ壊滅しますが、その一方、潜伏する第二ファウンデーション人は、当初から、ダレル博士の父娘関係を巧みに利用し、予定していた多数の犠牲を払ったことにより、ダレル博士らに、その壊滅の思い込み・自己満足をさせることで、自らの永続によるセルダンプランの当面の影の役割を果たし続ける、というプラン完成の条件整備に成功します。

(探索経過)

 ①密航する娘のアーカディ(検出不能の第二ファウンデーションによる精神干渉あり)とともに、ホマーによるカルガンの調査

 ②カルガン君主ステッティンの愛人カリア(第二ファウンデーション人)による、難航するホマーの調査への手引き、アーカディの逃走の誘導

 ③警官(第二ファウンデーション人)の追跡やトランターのプリーム・パルヴァー(第二ファウンデーション人の第一発言者)の保護といったお膳立て

 ④トランターで退避中の、アーカディの生後に埋め込まれていたひらめきによる、父あてのメッセージ(第二ファウンデーションはトランターに存在)発信という誘導

 ⑤この間、愛人カリアの煽てにのせられたステッティンよって、カルガンとファウンデーション間での戦闘が勃発、(第二ファウンデーションによって第一ファウンデーションが勝利するという意識によるカルガンの戦意喪失によって)第一ファウンデーションが勝利

 ⑥このようにして、ダレル博士の興味をトランターへと誘導することには成功する一方、トランターへは行かずに、この間にダレル博士が開発した精神空電装置によって、再集合した面々から、アンソーアが第二ファウンデーション人であると、予定通り判明

 

(2021.02)

では、また!