キジしろ文庫

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オースン・スコット・カード「エンダ―のゲーム」(下)

あらまし

 三年にわたる苛酷な訓練で、つねに戦績表のトップを守り続けてきたエンダーは、バトル・スクールはじまって以来の最年少で竜隊の指揮官となった。だが、集合した隊員をみて愕然とした。ラーンチイ・グループから直行してきた戦闘未経験者がほとんどで、数少ない古参兵もエンダーより年下の者ばかりだったのだ!厳しい戦いの訓練をくぐり抜け、やがて人類の運命を握る存在へと成長していくエンダーの活躍を描いた傑作。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

  2/2です。本書では、理不尽に追い詰められ・操られ・罪を負わされるなどの「非情さ」(思い違いに端を発した、殺らなければ、殺られてしまうなど)の受難と、その際に生じる人間に潜む罪や業と、さらにその「赦し」を得ようとすることで人生を全うする「贖罪」といったことが述べられます。この前提としての、他を憐れむことのできる良心・信頼や共感が求められていたことが、「救い」として大切なのだろうと感じました。

 (1)指揮官に昇格したエンダ―は、指揮官としての自省をしながら、強権を奮い、僻み・妬みを煽り孤立をつくり、尊敬や友情を得るための能力の発揮を求めていきますが、一方、教官によって夜間練習で得た友人との別離を強いられます。

(2)厳し過ぎる連日の戦闘訓練にくわえ、その勝利が、かえって他の指揮官たちの憎悪の対象となります。殺意に対して手助けのないエンダ―には、殺るしかありませんでした。さらに、その直後の2隊との戦闘訓練といった、何でもありの理不尽なゲーム設定に、心身共に疲弊し意欲を失いかけてきたところで、卒業命令と休暇が与えられます。

(3)休暇では、姉の癒しのなか、兄からの愛を求める気持ちの吐露や、友人たちや地球での生活を想い、戦闘での即時通信の構築・指揮者不在の第三次侵略の配備中・バガーとのコミュニケーション不全という戦闘理由などを聞き、生き延びるために、決意を新たにします。

(4)移籍先は5年飛び級のコマンドスクールです。シミュレーターによる戦闘指揮を行う中、伝説の艦隊指揮官のなお一層の厳しい指導のもと訓練が始まります。まず、対バガー戦略として、全てを一体となって思考させる女王への一撃が、第二次侵略を終わらせたことや、新たな兵器の存在の説明、そしてバトルスクール時代の仲間たちが編隊リーダーとなった訓練が開始されます。

(5)ここで、夢にうなされ倒れるまで疲弊したところで、最終試験に臨みますが、それは公正さのかけらもない千対一の戦闘でした。エンダ―は、開き直りを見せ、見事勝利を納めますが、コマンドスクールでのゲームは全て実戦であり、エンダ―は、殺し屋として・兵器として利用され騙されたことに、深くキズを負います。なお、地球では即内戦勃発しますが、兄の調停提案により停戦します。

(6)このようにバガーだけでなく、2名を死に追いやった罪悪感に苛まされるエンダ―は、地球にいる兄からの解放と、姉とともにバガー植民惑星への植民団統治のため、新世界を築くことに参加します。そこで、かつての「世界の終わり」ゲームの再現されたところに足を踏み入れます。そして、心の会話を通じて、バガー達は自分たちの罪を認め・赦しを得ようとしており、エンダ―は、自身の贖いを果たそうと、女王バガーの蛹を運び出し、平和に暮らせるようともに宇宙を旅することとなりました。

(2020.11)

では、また!