キジしろ文庫

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西加奈子「サラバ!」(上)

あらまし

 僕はこの世界に左足から登場した――。
 圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。
 そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと 

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 父が海外赴任する圷(あくつ)家の、語り手歩(あゆむ)の11歳までの幼少期を過ごしたイラン、日本、エジプトにおける、家族それぞれの変化の過程が語られます。とくに、姉(貴子)と弟(歩)は、これまで目にしたことのない環境(ピラミッド、メイド、日本人学校、エジっ子)、習慣(IBM、貧困、喜捨)や宗教(へジャブ、礼拝)などを直接体験、吸収し人格の形をなしていった?ところで、次に引き継がれます。なので、大きな波乱も少なく、語られる世界も狭いので、読みやすさはありますが退屈気味です。これからなのだと思いますが、海外渡航する人や多様性についてとか、子育て中のお母さん向けなのか、宗教なのか、どうなっていくのかこの先が楽しみというよりも、読み進めようか戸惑ってしまいます。

・母は、可愛い・女らしいとか女性として褒められたり、美人で勝気・でも男にたよらないと生きていけないといった女性、イラン滞在時に離婚決定し帰国。

・姉は、反面教師の母を見て、奇行や乱暴(怒り)などマイノリティー(辛い思いを知っている人間になりたい)にこだわる、しかし、それで他者(母や友達)の気を引こうとする甘えもありました。同級生(ホモ)との恋愛と別れを経験します。

・歩は、反面教師の姉を見て育ち、臆病で利己的で卑怯な一方で、外では目立たず他者をおもねる良い子を演じる(ちょっと甘えてみせたり、拗ねてみせたり)二面性をもっています。格差を乗り越えたエジっ子ヤコブとの対等な友情と別れを経験します。(2020.02)

 では、また!