キジしろ文庫

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ジェームズ・レッドフィールド「聖なる予言」

あらまし

 南米ペルーの森林で、古代文書が発見された。そこには、人類永遠の神秘、魂の意味に触れた深遠な九つの知恵が記されているという。私は、なにかに導かれるように、ペルー行きの飛行機に飛び乗った。偶然とは思えないさまざまな出逢いのなかで一つずつ見いだされる九つの知恵とは?世界的ベストセラーとなった魂の冒険の書、待望の文庫化。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書については、以下の備忘のためのとりまとめを行いました、参考まで。

(1)フレーム

 本書に登場する主人公は、霊的なものなどへの好奇心や探求心に富み、また、もてる力を活かそうとするなど誠実さをもちながら、周囲を気にかけつつ、よそよそしさもある人物です。このように本書にうってつけの主人公は、たまたま聞きつけた、謎めいた9つの知恵(予言)に惹かれてペルーを訪れます。そして、人を変え場所が変わり、歴史や人生を振り返り、一つずつ知恵を体験しながら感化され、自覚なくのめりこみ、9つの知恵すべてを体得してしまうという、本書は教化の書です。

 ここで、ペルー政府と教会は、9つの知恵(予言)は、キリスト教の神の定めや意思、これに伴う信仰を覆し混乱を招くものとして、コピーをはじめとした予言の隠滅などの弾圧と、これに関わる人の逮捕拘留を続けています。また、教会が先に探し当てた、まだ、見つかっていなかった9番目の知恵を、主人公たちが奪い取るなど、主人公たちは、その進む上での障害や脅威、多くの苦難を乗り越えていきます。こうして、9つの知恵(予言)の隠滅を防いだことで、今後の世界に向けて活かそうとする、冒険と改革のプロセスでもあります。

(2)9つの知恵(予言)

 さて、9つの知恵(予言)とは、人間存在や人生の目的や意味、社会や自然との関わり方を貫く真理を、その解明には不向きな科学の体系にはよらず、神や人間の魂といった宗教的霊的世界観を通じて、人間が自分の意志で進化する、という予言をしたものです。以下に具体に記します。

・わたしたちは、平凡な日常に空虚を感じる一方で、刺激や何かを求めてやまない気持ちも抱えて、毎日を送っています。なので、偶然を越えた偶然の一致や直感に働く力に、ふと、意識が向くようになったり、また、これに引き寄せられていると感じたり、さらに、これにより、神秘的感覚や興奮が引き起こされ、生き生きと感じてしまう、といったことを経験するようになります。

・これは、わたしたちが、人間や自然・宇宙が放つエネルギー(オーラや空手道の気、パワースポットのパワーなど。とくに、ここでは、霊性を支える栄養や燃料のようなもの)によってつながり、相互にこのエネルギーのやりとりをしている霊性に裏打ちされた存在だからです(エネルギーを知覚するには、美しいと感じる・吸い込むなどのコツが必要です)。

・たとえば、多くの人は、自然などの豊かなエネルギー源とつながっていないため、霊性欠乏に伴って、無気力や不安感・ストレスを感じます。そこで、この払拭をしようと、身近な他人の注意をひきつけ、そのエネルギーを奪おうとし、また、奪われてしまった人も同様にして、取り戻そうしてしまいます。このように、他人を支配し、屈服させ、自分の思い通りに動かし、勝利の高揚感を得るといった、権力争いや競争という事象は、霊性エネルギーの欠乏とその争奪が目的だと解されます。

・だから、このような争いを無くすには、原始の自然の美しさなど自分に合ったものから、十分で高品質なエネルギーを受けとらなければなりません。具体には、自然や宇宙との一体化とこれに伴う愛が溢れる至福感といった神秘体験や瞑想があたります。なお、この愛の状態に至ると、エネルギーを与えることもできるようになります。

・また、日々の行い(繰り返すコントロールドラマを消滅させ、新たな人生の展開に臨む)、両親から受け継いだ信念(本当の自分の発見)には注意を向けることが大切です。これにより、神とのつながりに向けた、自らの霊的成長の自覚や充足感、使命感をもおぼえることにつながります(日常世界に決別し霊的世界へ歩み始める覚悟をすること)。

・そして、偶然の一致にあわせてエネルギーレベルを高めると、今までとは異なる考えである直感や夢といった霊作用(隠されたメッセージ)が起き、その流れにまかせ、その導きにしたがっていけば良いのです。また、愛を感じ、人どうしでエネルギーを与え合うことは、求める答えを得たり・新たな着想をしたりなどの霊性の好循環を生み、自身の霊的存在へとより近づきます。

・さらに、霊的なものによって調和され、そこに価値を置く社会への変革(霊的文明)も引き起こされ、高エネルギー環境も形成されます。

・このようにして、エネルギーレベルを高め、霊的成長を進めると、ついには、神とつながることができ、わたしたち自身は、宙に浮かび、他人からは見えない霊体へと変容(天国に通じる存在)します(主人公たちは、イエスがその先駆けであったと解釈)。

(3)コントロールドラマの参考説明

 コントロールドラマとは、他人を支配し、他人の思考や心を奪う(気になる・注意を払う・かかりきりになる)ことによって、エネルギーを盗むという、身に染みて、抜け出せなくなっているくせのことです。これは、偶然の一致による新たな人生の展開に臨めなくなるための障害になるものです。

 参考に、この前提となる権力闘争は、暴力や論争などの手段を経て、他人を出し抜き・支配することで、優位に立ち、勝利の高揚感を得るものですが、これは、相手を犠牲にして、他人のエネルギーを奪うことが目的です。ここで、エネルギーの抜きとり方から見ると、4つの戦術があるというのが、コントロールドラマになります。

 このコントロールドラマの型は、以下の攻撃的なものから受け身的なものまでの、4つの型になりますが、本書とは切り離しても、役立ちそうですので、まとめてみました。ここに、病的な執拗さ・陰湿さが加わると、相手の受けるダメージはさらに大きくなると思います。

 なお、コントロールドラマを演じる相手への対処については、もちろん、期待される演者となることではなく、演じるドラマの主旨そのもの(たとえば、脅している)を指摘し、意識させてしまうことがよいと、本書では述べられています。

①脅迫者:言葉や暴力による嚇しなどの攻撃をする(受け手は注意を払わざるを得ない)。

②尋問者:質問をしては相手の世界に介入する。誤りや欠点を見つけて、相手を批判する(受け手は、尋問者のまわりでは、自分のことが気になり、尋問者の言動に注意を払い、間違えることのないよう・間違えてもみつからないよう気をつけてしまう)。

③傍観者:自分の内に引きこもり、気持ちや態度をハッキリさせず、秘密めいて見せ、相手が何か探り出してくれないかと待ち望み、相手を引っ張り込む(受け手は、かかりきりになってしまう)。

④被害者:自分に起きたひどいことを話し、それがいかにも相手に責任があるように匂わせ、もし助けてくれなければ、このひどいことはずっと続くと訴える。相手に理由もないのに罪悪感を感じさせる(受け手は、この人のために十分尽くしていないという思いを弁護しなければならない立場に追い込まれてしまう)。

 (2022.02)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!