デヴィット・フォスター・ウォレス「これは水です」
あらまし
これは水です
思いやりのある生き方について
大切な機会に少し考えてみたこと
(文庫本帯表より)
リベラル・アーツ(人を自由にする学問)の奥義を説く!
「来る日も来る日も」がほんとうは何を意味しているのかを、あなたがたはまだご存じない。そこにあるのは、退屈、決まりきった日常、ささいな苛立ちです。
そこから自由になるためには、「なにをどう考えるか」をコントロールするすべを学ぶこと。そして頭の「初期設定」をリセットすること。
(文庫本帯裏より)
よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★星1
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
本書では、ありきたりの考え方を持つなら、ありきたりの日常が待っている。それがイヤなら、思考を無自覚にスルーさせないこと、そして見直しをしてみること、を述べておられるようです。
具体には、考える前にどんな考え方をするのかを考えもせずに、またそのコントロールもなく、無自覚に突っ走ってしまいがちなので、考えるに際しては、そもそもの知識や経験のインプットやアウトプットする初期設定を見直すといったコントロールをしなさい、ということのようです。P129のように設定を見直せば、世界やモノの見方が変わり、自身の飛躍・自由にも至るということなのでしょう。
もう少し、詳しく述べると、
・わたしたちは、教育をはじめ、先入観や固定観念、一般常識や慣習、既成の概念や価値観、他人の視線や評価などなどの遺伝的環境的に身につけてきた考え方や経験とその記憶によって、短期長期の内的外的変動に対する様々な心理的生体的刺激・衝動や欲求といった本能を、心身ともに自律的に充足・維持させています。
・しかしながら、盲目的に受け身となって得た知識や考え方を振りかざしながら進んでも、実情は、富や権力、美貌・知性への渇望と絶望・苦悩と、その不条理を乗り越える信仰などにすがることを繰り返している(拘束されている)に過ぎません。
・ではどうしたら良いのかというと、P129にあるような、雑念を振り払い執着を断つといった心身の修練(解放、自由)が提示されるわけです。
・なので、本書は、現実を悲観的・虚無的な世界観で捉えており、したがって、隠遁生活ような強い覚悟と実践をもたなければならないほど、自由や幸福に至るのは難しいのだろうと感じました。
・そうは言っても、自己啓発に対する貴重なご高説には若干なりとも触発されましたし、本書を手にする意欲ある向上心に敬服しつつ、また、その願いが叶うよう祈念したいと思います。
ちなみに、「これは水です」とは、「魚の目に水見えず人の目に空見えず」、という日本の諺にある、身近にあって、自分にかかわりの深いもの(=知識や考えるということ)はかえって気づかないことのたとえ、です。
(2022.01)
CM
最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。