キジしろ文庫

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テネシー・ウィリアムズ「欲望という名の電車」

あらまし

「『欲望』という名の電車に乗って」ブランチが降り立ったのは、ニューオリアンズの下町フレンチ・クォーター。南部の大農園の娘から身を持ちくずし、妹ステラのアパートに身を寄せた。傷心のまま過去の夢に生きる彼女を迎えたのはしかし、ステラの夫スタンリーらの、粗暴なまでの“新しいアメリカ”の生だった―。1947年初演、ピューリッツァー賞受賞の、近代演劇史上不朽の名作。(amazon商品の説明「BOOK」データベースより)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書は、上流や特権階級制度などを求める醜悪な欲望(悪霊)が、ついには人間の精神を蝕んで狂気となってしまうというものです。

・強烈な欲望に支配された没落地主のブランチの自我は、宝石、ドレス、香水などの豪華さだけでなく、階級制の立場や礼儀、それに係る身勝手な振舞いや他人からの気遣いに価値観を置き、相応しない現実を否定し続けます。

・たとえば、16歳のときの恋愛と結婚。しかし、ブランチが一方的に怒りをぶつけたことで、同性愛者でもあるという異常性をブランチに受け止めてもらえなかったと思い、その変質者は自殺をしてしまいます。これをキッカケにして、ブランチの自我に異常性(悪霊)が忍び込み、増幅していきます。たとえば、空虚な心を埋めるためのハイスクール国語教師としての教え子への誘惑や街娼、そして妹の家に一方的に厄介になり、妹の夫スタンリーの友人ミッチを、自分の休養のために篭絡するなどです。

・他方、工場労働者であるスタンリーは、粗野で貪欲、猛々しく力強い野性と生命力によって、サバイバルでもある自由な社会を逞しく切り開き、生き抜いています。

・ブランチはスタンリーを毛嫌いし、けだもののスタンリーと一緒になって落伍する妹を抜け出させようと考えたりしますが、ブランチとミッチとの結婚を目前にして、ブランチの過去が暴かれてしまいます。さらに、ブランチには、あってはならない凌辱行為という否定してきた現実によって、その認識をする自己をも否定することに至ってしまい、精神を蝕まれ、人格を失うこととなります。

 (2022.01)

CM 

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