門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」
あらまし
2011年3月、日本は「死の淵」に立った。福島県浜通りを襲った大津波は、福島第一原発の原子炉を暴走させた。全電源喪失、注水不能、放射線量増加…このままでは故郷・福島が壊滅し、日本が「三分割」されるという中で、使命感と郷土愛に貫かれて壮絶な闘いを展開した男たちがいた。あの時、何が起き、何を思い、人々はどう闘ったのか。ヴェールに包まれた未曾有の大事故を当事者たちの実名で綴る。 (文庫本裏表紙より)
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よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★星1
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
東日本大震災の津波に伴い福島原子力発電所の全電源が喪失、海水注入やベントなどの対策を講じるなかでの水素爆発など、未経験の状態でのアクシデントやトラブルによる遅れ・やり直し・失敗の一進一退の繰り返し、わずかに可能な計測器と、放射線下の現場での人の手作業だけをたよりに復旧を進めます。
そんな、現場を任された人たちの責任感・使命感や信頼関係の熱い思いだけでなく、不安や恐怖、絶望感や迷い・躊躇いとともに最後まで諦めない強い気持ちなども伝わってきます。また、仲間意識はあったにせよ、決して死を覚悟したような感情的な勢いやノリが彼らを動かしたのではなく、臨機応変の知識や冷静な判断、的確な指示などを個人個人がしていることもよく分かります。
忘れた訳ではありませんが、現場の手で最悪の事態を防いだ、当時の緊張感をあらためて思い出さしてくれました。(2020.06)