キジしろ文庫

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渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」

あらまし

 孤独に負けず。友達もなく、彼女もなく。青春を謳歌するクラスメイトを見れば「あいつらは嘘つきだ。欺瞞だ。爆発しろ」とつぶやき、将来の夢はと聞かれれば「働かないこと」とのたまう―そんなひねくれ高校生・八幡が生活指導の先生に連れてこられたのは、学校一の美少女・雪乃が所属する「奉仕部」。さえない俺がひょんなことから美少女と出会い…どう考えてもラブコメ展開!?と思いきや、雪乃と八幡の残念な性格がどうしてもそれを許さない!繰り広げられる間違いだらけの青春模様―俺の青春、どうしてこうなった。 (文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書では、人との関わりに対して、①いじめや苦い失恋経験から、ビビりで怖気づく、または他者への信用を置かなくなる、②空気を読んだり、気を回したり、他人に合わせたり媚びたりといった同調圧力に嫌気をさす・嫌悪する、そして、対人関係について距離をおこうとする、このような3人(比企谷八幡雪ノ下雪乃由比ガ浜結衣)による、学園青春ラブコメ?です。

 この第1巻では、奉仕部入部、由比ヶ浜へのクッキー教室、材木座ラノベ審査、三浦・葉山とのテニスコート争奪戦が盛り込まれています。

 とくに、劣等感を背景に、天邪鬼で、不合理・悲惨を好み、悲観的、斜に構えるなどの、捻くれボッチ(ルサンチマン)をかっこいいとする主人公は、友達・恋愛・青春・スポーツ・ラブコメなど世間一般の価値観に容易に迎合しません(たとえば、冒頭の「青春とは嘘であり、悪である」「リア充爆発しろ」など)。素直に屈折してます。

 しかしながら、このような人との関わりに距離を置こうとしているにもかかわらず、その最たるものである、校内生徒の悩みを解決するといった奉仕部での活動だったり、あるいは、雪ノ下や由比ヶ浜とのやりとりで、裏では期待をしているラブコメを求めるのが見え隠れしています。

 したがって、主人公たちの自分らしさを求めて行動すればするほど、友達や恋愛といった青春を遠ざけてしまう、この矛盾構造に対して、子供以上大人以下の主人公たちが、とても気丈に振る舞うところが、もどかしさやイタさ、せつなさを感じるところでした。(2020.07)

 では、また!