キジしろ文庫

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榎本まみ「督促OL修行日記」

あらまし

 入金要請の電話をかけると、お客様から罵声の嵐…。日本一ストレスフルな職場・督促コールセンターに配属された著者は、入社半年後には体重が10キロも減ってしまう。しかしある時、一念発起!気弱なOLがトホホな毎日を送りながらも、独自に編み出したノウハウで、年間2000億円の債権を回収するまでの実録。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと 

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

    本書は、女の子は、かわいいとちやほやされて輝く生き物なのだと語り、内向的でコミュ力は低いけど努力家女子が、カード会社入社後、コールセンターに配属され、精神的に過酷な督促業務をやり遂げていくお話です。本人の自己研鑽もさることながら、先輩たちに蓄えられている経験・ノウハウをめげずに身につけていくことで、元気と自信をつけていくところに勇気づけられたり、また現場で行うナレッジマネジメントを目の当たりにしたように思えました。

    ところで、ふだんの日常では、あげあし取りなど人を揶揄することは、ありふれたように身の回りで起きていますし、あるいは、いじめやハラスメント(嫌がらせ)、メンタルヘルスなど、まさに巷を賑わしてもおります。

    しかし、作中あった犯罪まがいの罵倒、恫喝、泣き落としなどは極端ではありますが、根っこは大きく変わらないと思います。それには、置かれた立場や役割の違いといった関係性があるにもかかわらず、常に人の弱みやスキ、あらをさがし、つけ込み・あげつらい・やりこめる、あるいは挑発する(主従・隷属関係を強要する)。そこで、一言でも詫びようものなら、穴の毛までむしり取りにくる。しかも、たちの悪いことに、みじんも悪いことをしているなんて、思ってもいない。といった、ひとつの生物的な反応に通じるものが、あるからなのだと思います(自分の労力をかける努力などの「足し算」ではなく、相手からの「引き算」をする方が手っ取り早いし、労力も少ない)。

    こういった場合は、相手にかかわらないのが一番なのですが、なかなかそうもいかない場合があるから、問題なのです。なので、本書にあった、女子力のツンデレを使う、約束事は相手に話させると守られやすい、捕食者は動くものを標的にするので危険なときは本能的に固まってしまう、メモを用意し自分が冷静になる、ゆっくりしゃべると自信があるように受け止められる、苦情をコレクションして楽しむ、お礼や感謝をくわえると相手は落ち着くなど、実際使っているものなので、とても良いヒントや解決につながっており、新しい切り口で新鮮だったなと思いました。(2020.02)

 では、また!