キジしろ文庫

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森博嗣「ペガサスの解は虚栄か?」

あらまし

 クローン。国際法により禁じられている無性生殖による複製人間。研究者のハギリは、ペガサスというスーパー・コンピュータからパリの博覧会から逃亡したウォーカロンには、クローンを産む擬似受胎機能が搭載されていたのではないかという情報を得た。彼らを捜してインドへ赴いたハギリは、自分の三人めの子供について不審を抱く資産家と出会う。知性が喝破する虚構の物語。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1

 ウォーカロンやクローンをまじえての愛憎悲劇は、心が痛むだけでなく、空しさをも感じる。だが、これに対するヒントがここにはあると思う。(2019.11)

ここに注目

「(前略)それは、ペガサスの妄想だろう、というものです」

「妄想?妄想っていうのは、具体的にどんな状態ですか?」

「希望的なものか、あるいは、悲観的なものか、いずれにしても、感情的な思考によって、現実を見誤ることです。(以下略)」

(中略)

「背伸びをしすぎたのです、彼は」オーロラは言った。「プライドが高く、早く自分を認めてほしい、と考えたのでしょう。実力が伴わず、このような事故を起こしてしまいました。責任は、周囲の人工知能が共有すべきものです。マガタ博士の精神を尊重し、私たちはもっと共有し、助け合わなければなりません。彼が指導によって修正され、今回の失敗から学ぶことを私は願っています。ハギリ博士は、どう思われますか?」

「(前略)マガタ博士が望んだものが、今の社会なのでしょうか?」

「おそらく、マガタ博士はなにも望んではいない、と僕は思います。(中略)マガタ博士ほどの人が、望む望まないで、ものごとを判断するとは思えません」

「感情的ではないという意味ですか?では、何?何が彼女のモチベーションなの?」

「もっと、そうですね、自然なというか、素直な行為だと想像します。つまり、見たいものを見るのではなくて、どこかでふと動いているものを見る、我々の目は、そうじゃないですか。自由に目を向ける。考えたいものを考えるというよりも、ふと考えてしまう。我々が、思いつきと言っているものに最上の価値があって、ただそれにすべてを委ねているのです。そういうものには、理由がない。きっと、幼い子どもがそんな行動を取ると思います」

「そうね、そのとおりだわ。子供って、そうなんですよ。考えているわけじゃないの。感情に支配されてもいない。感情的なのは、むしろ成長した大人の方です」

「感情というのは、初歩の知性が作り出した幻想ですよ」 

では、また!