キジしろ文庫

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山口周「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」」

あらまし

 グローバル企業が世界的に著名なアートスクールに幹部候補を送り込む、あるいはニューヨークやロンドンの知的専門職が、早朝のギャラリートークに参加するのは、こけおどしの教養を身につけるためではありません。 彼らは極めて功利的な目的で「美意識」を鍛えているのです。なぜなら、これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない、ということをよくわかっているからです。では、そのように考える具体的な理由はなんなのでしょうか?(本表表紙より)

 よみおえて、おもうこと 

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 表題どおり、論理と理性による以下のような経営上の問題点があるので、美意識といった直感と感性によるアート・サイエンス・クラフトのバランスの良い、組織づくりや人材を育成すべきであり、そのリーダーシップの発揮が大切だということに、具体例をあげながら、大半をさいて書かれています。

・不安定・不確実・複雑・曖昧な状況に機能できないこと

・客観化によるコモディティ化がコストやスピードを追及する結果、コンプライアンス違反の発生や都合の良いいい訳をつくること

・熱いロマンを語るより、冷たいソロバンといったようにアカウンタビリティーに乏しいこと

・自分らしさを求める自己実現欲求市場に対応できないこと

・変化するルールを先取りしていく拠り所とはなりえないこと、などなど

  しかしながら、本書を読むまでもなく、企業経営において創造性や創作を求めれば、当然、直感や感性が重視され、信条や世界観のひとつとしての美意識が求められることは、小学生でもわかることでしょう。

 また、本書で主眼としたその経営手法についても、単に美意識を既存の組織運営にのせているだけで、目新しいものはありませんでした。さらに、興味を持ち豊かな感性などを育てる方法も、絵画や文学・詩に親しみ、感じるといったありきたりのものにすぎませんでした。

 全体的には、理屈攻めになっているため、企業に係る芸術関係の方や造詣の深い経営者にいろいろ語って頂いたもの方が、ハッとしたり、ビビッときたりと、まさに何かを感じられるものがあったかなあと思いました。以上、批判ばかりとなってしまいましたが、本書は、成功・失敗事例など知識や情報も豊富でわかりやすく、いまどきのコンサルタントの考え方も伝わるなど、直感や感性も含めた経営面での幅広さを求める方には、良い本だと思います。(2020.03)

 では、また!