キジしろ文庫

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京極夏彦「陰摩羅鬼の瑕」(中)

あらまし

 由良由良由良。頭から離れない。あの青白い顔が。あの硝子玉の目玉の鳥の死骸の群れが―。伯爵家での事件を解明できぬまま、警察を辞めた伊庭銀四郎。再び疼きだした心の傷を癒すため、伊庭は京極堂に赴く。一方、「鳥の城」では関口が花嫁・薫子を護っていた。だが、僅かな時間、薫子は一人になった―。 (文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 2/3分割です。どうやら関口君は、自ら死や不安とともにあることを望むとともに怖れてもいるという非現実にアシを置いています。そこで、世間に埋没させ保身を図り、仮の安寧を得ますが、結局、死や不安と直面できず、忌避する自己を卑下、蔑んでしまい、さらに、死を望むという負のスパイラルに入るタイプのようです。

 さて、あらましにあるように、物語は進みます。伯爵と薫子の婚礼やその会食後、胤篤老人が語った、妻の部屋で見た、白い夜着を着て寝台に腰掛ける、4年前に亡くなった母早紀江とは?、榎木津の言った「何処」「鄙俗しい」とは?これらが、どういうことなのか、次回が楽しみです。以下、作中引用です。

以下、非公開

・「関口先生が嫌悪されるのは、実は存在するコトに対し何の疑念も抱くことなく日常に埋没してしまうコトーなのではないのですか。そうした無自覚な在り方に対する抵抗感こそが貴方の中心にある。貴方は、そうした在り方が本来的でないと、どこかで感じていらっしゃる。そうではありませんか」

・私の中心部は成長することを望んではいない。寧ろ朽ちることを望んでいる。私の魂は、多分日に衰えて行く肉体を羨ましく思っているのだ。私の病は、生きることを望めなくなる病なのだ。死を強く願うが故にそれを忌避し、忌避することでしか手に入らない安寧を侮蔑するー。わたしはそうした無間地獄に堕ちてしまった人間だ。

・関口と云う人物は安寧を蔑み不安を糧として生きて居るのに違いない。それは実感できた。関口巽は、常に破滅を目前に幻視している。そしてその幻影が現実に到来することを極端に怖れている。怖れるが余り、それに目を瞑って見ない振りをすることが出来ない。しかし目を瞑らねば平穏な日常は入手出来ない。従って彼は日常を嫌悪する。無事安穏とした日常的在り方を軽蔑する。(中略)臆病な彼はやがて必ず訪れるだろう破滅に背を向け惰眠を貪るような真似が出来ないだけなのだ。過剰な保身は往々にして攻撃に転ずる。だから関口もある面攻撃的だ。

(2020.07)

では、また!