キジしろ文庫

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京極夏彦「塗仏の宴 宴の支度」(下)

あらまし

「俺個人がねえだと?」。胡乱な健康法を伝授する「長寿延命講」のからくりを暴き、嘯く“心霊少年”藍童子の言に刑事・木場の心は乱れた。折から富豪・羽田隆三の依頼に応じて伊豆下田に赴いた織作茜の前に再びあの男が現れていう。「しりたいですか」。それは新しい道ならぬ黄泉路へと茜をさしまねく声だった。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 この「塗仏の宴 宴の支度」は、自分の選択、判断や考えてみる、感情や欲望といった、信じて疑わない理性や知性、感性が、自分によるものではないと、疑がったところで終わります。そこで以下、ここまでの想像です。

 それでは、それらが、社会や他人、思想・コトガラからの影響でしかないとなれば、絶望や悲嘆し人格を失っても、あるいは虚しく醒めてみても、またそれとても社会などの意志でしかないとなってしまいます。

 しかし、その確からしさはどうなのかというと、表現をする道具である言語によってしまうでしょうし、それは汲み取った瞬間に消え失せてしまう言語表現の限界につきてしまうのだと思います。

 ところで、現状は、インターネットやVR、AIといった別空間が生じたり、自然災害や感染症などの攪乱が起きる環境変化や自然淘汰がますます目まぐるしくおき、人の幸不幸もさまざま複雑化してるのだと思います。

 このようななかだからこそ、人の欲望や奢り、執着といった言葉を乗り越えた境地を開くことが大切なのだ、ということでしょうかねエ。なので、続く3分冊に期待です。以下は備忘録です。

1.しょうけら

 刑事の木場修太郎の出番です。猫目洞のお潤から紹介された静岡出身の女工三木春子は、ストーカーの新聞配達員工藤信夫からの手紙(1週間分*7週)が常に監視されているかの如く、事細かい行動まで言い当てられていることに、悩み恥じ怯えています。

 また、春子は、病弱なため、通玄先生による長寿延命講(些細な願望に付け込み、夜通しで生活習慣などの健康法の伝授や虫を衰えさせる高価な薬の処方などを受ける、庚申講のようなもの)で60日毎の衣服・食事や所作などの生活指導を受けますが、訳もなく、言いつけを守れず、薬を買い続けています。どうやらこれらは、・・・

 以下、非公開

 なお、庚申講とは、人の体に棲むしし虫(しょうけら)がお盆のご馳走を食べたいがために、庚申の日に、その罪を天帝に報告して、人の寿命を縮めさせてしまうので、その日は夜を明かし、寝ている間に虫が体から出ないように監視しているものでした。しかし、庚申講は、実は天台宗布教の画策のもと、現世利益の行事に変質してしまっています。どうやら、長寿延命講も、・・・

 以下、非公開

2.おとろし

 織作茜の出番です。茜は、製鉄会社会長で祖父の弟である羽田隆三が、茜の安房の土地を買う条件で、羽田の徐福研究会(不老不死の仙薬を求めた、羽田家発祥の丹後他日本各地に残る、渡来伝説をまとめるなど)を手伝うこととなります。しかし、経歴詐称の太斗風水塾の経営コンサルタント南雲正司や研究会の学者東野鉄男が、本社社屋や資料館用に、韮山の土地購入を勧めてきました。このため、茜は、秘書の津村とともに実地調査に乗り出しますが、改葬に伴う屋敷神の奉納先である下田で・・・

 以下、非公開

(2020.05) 

では、また!