キジしろ文庫

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ヴォルテール「カンディード」

あらまし

 楽園のような故郷を追放された若者カンディード。恩師パングロスの「すべては最善である」の教えを胸に、リスボンの大地震、戦乱、盗賊や海賊の襲撃など、度重なる災難に立ち向かうのだが…。18世紀啓蒙思想ヴォルテールの代表作。「リスボン大震災に寄せる詩」を完全訳で収録。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書は、最善説を素直に信じる主人公が、馬鹿馬鹿しくも不運と幸運に次々と飛び込み、その度に信念を失いかけたり・強めたり、惨憺たる不幸を語る人たちが冷めていて無感情だったり、当時の社会の社交や風俗へのイヤミも含めて、最後まで、皮肉とユーモアを利かせたパロディでした。

(最善説におどらされ、一喜一憂して、自己を見失っている愚かな姿を見て笑う喜劇・バラエティ番組なので、大真面目に思想・宗教をふりかざしては、台無しです)

 さて、以下は、備忘のための簡単なとりまとめです、参考まで。

 最善説を信じて育ったカンディードが、ドイツの城を放逐され流浪します。そこでは、騙し、鞭打ち、虐殺、凌辱、梅毒、乞食、沈没、大地震、略奪、異端審問、火炙り、絞首刑、妾、殺人、海賊、ペスト、人身売買、強姦、娼婦、奴隷、詐欺、泥棒などあらゆる不幸に遭遇・目の当たりにします。

 そこで、カンディードは、当初は頑なだったその信念がしだいにゆらぎながらも、訪れたエルドラドに留まることや恩師や恋人との再会・赦免など多くの手助けもあり、捨てきることはできません。

 しかし、冒険の最後にたどり着いたコンスタンチノプールで、再会した仲間とともに助け合いながら、畑を耕し働くことにささやかながらも幸福を感じ、労働に人生の意味を見出し、やっと我に返ります。

※最善説とは:

・神が創造したこの世界は、最善となるよう整えられている。このため、すべての出来事は最善であること。なお、それは、人間には知りえない「全体」にとっての善であるため、個別の悪・不幸・犠牲が「全体」の善には寄与することもある(さらに、災害などは、キリスト教では、人間の傲慢や奢侈への神の戒めという考え方が強かった)。

 (2022.02)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!