キジしろ文庫

ミステリーや文芸小説、啓発書などの感想やレビュー、エンタメや暮らしの体験と発見をおすすめ・紹介!

ロバート・A・ハインライン「月は無慈悲な夜の女王」(2/2)

あらまし

 2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取されつづけてきた。革命の先頭に立ったのはコンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が、強大な地球に立ち向かうためには…ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨篇!(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

  さて、勝手に分割した2/2です。第2章「武装した暴徒たち」、第3章「無料の昼飯はない!」と進むにつれ、テンポがよくなり、我慢した甲斐がありました。また、宇宙・政治経済文化・サイエンスなどのスケールの大きさ、テーマの幅広さなど、とても読み応えがありましたし、活気づくような気になります。

 さて、本書は、端的に言えば、地球にとって使い捨ての月世界人が、幾度も危機に見舞われながらも、その自由や独立を勝ち取るというものです。

 しかしながら、月世界人は、刹那的に漫然と為すがままにされることをあらため、また、代償をともない、さらに万策尽き絶体絶命に陥りながらも、武力と言う非情さも含めて敢然としかも真摯に、前(独立)に向かって突き進められるには、とても力強い背景が必要だったと思います。それには、何ものにも干渉されない主権といった「人が人を裁いてはいけない」にもかかわらず、月の植民地化・奴隷化といった不完全な世界の中で、「試されている」がゆえに乗り越えようとするという、強固な信念あったからこそなのだろうと思います。このように、まず、信じることがなければ、始まることも終わることもなかったろう、と思いました。さて、後半を以下に、簡単にさらっておきましょう。

  長官をはじめ月世界行政府の制圧に成功した主人公らは、勝利宣言とスパイ名の公表、大型レーザー・ドリル設置と砲兵隊や市民防衛隊などの戦争準備を進めますが、地球との交信検閲に失敗、独立宣言を決定し、地球との対峙が明らかになりました。

 そこで、主人公らは、これを地球の世界連邦に承認させるべく、穀物輸送罐に入り、不法入国ではなく、チャド民衆管理国の市民としてインドへ到達します。しかし、「追放制度への干渉」「月は非軍事目的の共同財産」「一方的穀物割り当て」「重婚・複数婚で逮捕監禁」「奴隷扱いの生産向上計画」「反逆罪」そして「裏取引提示」など散々な扱いを受け、交渉は全く決裂しました。

 このような、奴隷的未来に対して、輸出禁止を憲法制定までの暫定政府で議決しますが、その後2カ月が経過し、気の緩みが出てきたところへ、地球からの威嚇のための奇襲攻撃が始まりました。しかし、重力の小さい月での市街戦だったため、勇敢な非武装市民たちによって輸送艦含め壊滅させることができました。

 このため、岩の罐詰ミサイル攻撃を地球へ声明するも、回答がえられず、実行されます。これに対する地球からの巡洋艦が向けられるなか、2度目の一斉攻撃を実行し、兵力がなくなるギリギリのタイミングで、中国の承認などを得て、勝利することができました。

 P427引用

 「われわれ月世界の市民は前科者であり前科者の子孫です。だが月世界自体は厳格な女教師なのです。その厳格な授業を生き抜いてきた人々には、恥ずかしく思う問題などありません」

(2020.10)

では、また!