キジしろ文庫

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ユーゴー「レ・ミゼラブル」(上)

あらまし

 ひときれのパンを盗んだために、19年間もの監獄生活を送ることになったジャン・ヴァルジャンの波瀾に満ちた生涯を描く。19世紀前半の激動の時代に生きる人びとの群像を描く大パノラマ『レ・ミゼラブル』の少年少女版。中学以上。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:★★★星3 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 以下は、備忘のための簡単なとりまとめです、参考まで。

 ジャン・バルジャン(46歳)は、19年間の監獄から釈放されて町にやってきました。そこでは、町の人からは前科者として怖がられ冷たくされ、敵意すらもたれてしまい、食べることも泊まるところもなくさまよった末に、司教邸に辿り着きます。そして、泊めてもらったにもかかわらず、ミリエル司教の大切な銀の食器を盗み去ってしまいます。しかし、やがて捕まってしまい、司教の前に引き出されてしまいました。

 ところが、ミリエル司教は「あげたものだ」と言って、通りすがりに過ぎないジャン・バルジャンに、その社会的な過ちを咎めず、むしろ、ジャン・バルジャンの社会によって蝕まれ、荒みきってしまった魂への赦しや祝福を与えました。

 これにより、ジャン・バルジャンは、見失っていた自己の本性に気づきます。それは、更生は天国への第一歩を与えてくれたことといった、神の恩寵・慈愛の心にこたえ、その導きに縋り救いを求めようと回心したことです。そして、他人を憎み傷つけあうのではなく、人をいたわり思い遣り、さらに献身的に尽くそうとしたことでした(自分を救いあげてくれた司教のように(贖罪))。

 なお、このためには、現世では、ジャン・バルジャンには、その名前につきまとう世間の差別と偏見があることから、以降はその都度名前を変えて善行を積みます。

P47「あなたは悲しみの場所から出てこられた。だが、おききなさい。百人のただしい人々の白衣よりも、悔い改めたひとりの罪人の、涙にぬれた顔のほうを、神さまはずっと喜ばれるでしょう。もしあなたが、そのいたましい場所から、人間に対する憎しみと怒りを持って出てこられるならば、あなたは、あわれむべき人です。しかし、もしそこから人間に対する愛と、やわらぎの心と平和の思想を持って出てこられるならば、あなたは、われわれのだれよりも勝ったかたです。」

P67「ジャン・バルジャン、わたしのきょうだい。あなたは、もう悪のものではない。善の世界に生きるものです。わたしは、あなたのために、あなたの魂をあがなっているのです。わたしは、あなたの魂を暗い思想や、破滅の精神からひき出して、それを神にささげるのです。」

・まず、ジャン・バルジャンは、道すがらの火事の役所に飛び込み、子供たちを救います。

・そこで得た職から事業に成功し、病院や学校への寄付だけでなく、年老いた労働者のための基金をつくるなどもし、ついに市長となります。

・その間に、たまたま出くわした、馬車の下敷きになった老人を、自らも押し潰されるかもしれないスキマに入りこみ、救い出します。

・その後、娼婦となったファンティーヌの街頭での暴言に出会い、その不当な投獄を防ぎます(暴言はからかわれたことによるもの。牢に入れば子どものための送金ができず、子どもが路頭に迷ってしまう)。そもそも、ファンティーヌは、夫が死に、子どもコゼット(3歳)を預けて生計を立てていましたが、働いていた女工を、市長命令で解雇されていました。その後は、お針子で懸命に働いたものの、わずかの収入にしかならず病気にもなり、その養育費(子どもを人質扱いして高額を請求していた)などの借金も増えて、とうとう髪や歯を売ってまでして、生きていました。

ジャン・バルジャンには、身におぼえのない市長命令でしたが、ファンティーヌと子どもの悲運を助けようと思い、立ち直るまで面倒をみてあげることとしました。そして、安堵し幸せな夢を描くファンティーヌを療養させますが、容態は悪化する一方でした。さらに、娘コゼットに会うことができないとわかった(金ヅルの人質を離さない)ファンティーヌは、苦しみ悶えて亡くなってしまいます。しかし、ジャン・バルジャンが亡くなったファンティーヌの耳元で何かを囁くことで、ファンティーヌの表情には微笑みがのぼってきました。

・このファンティーヌの件とほぼ同時並行して、ジャン・バルジャンには、以下の事態が生じていました。

 拾い上げただけのリンゴを盗んだ咎で、ジャン・バルジャンとなって罰を受けるソックリ別人の重罪裁判に、ジャン・バルジャンはすすんで出席します。そして、その無実と、自分の行った、司教の銀の食器を盗んだことや、回心の考えに沈んでいた際に、無意識の内にお金を奪った罪を正直に告白し、無期徒刑の罰を受け入れました(ファンティーヌを気に病み、しかも子どもを連れ戻す時間もなくなってしまいました)。

・その後、徒刑労役中の補修中の船で、墜落しかかった水夫を、ただ一人綱具をよじ登り帆桁から引き上げました。ただし、引き返す途中で落水し、溺死扱いとなりました(この後、ジャン・バルジャンは、本当は脱獄囚です)。

・さて、亡くなったファンティーヌとの約束でもあったコゼットは、預け先で、奴隷のようにこき使われ、折檻をあび、陰惨な虐待を受けていました。そこへ、どこからともなくジャン・バルジャンが現れます。このボロを着て、痩せて青ざめ不安げで、深い影をたたえた目をしたコゼット(8歳)をテナルディエ夫妻から助け出し、用意していた喪服に着替えさせて、ふたりは、パリで暮らし始めます。

・コゼットを見たジャン・バルジャンは、子どもへの愛情に心奪われてしまいます。そして、文字を教え、母親の話をし、神への祈りも教えました。コゼットの方も自然と慕いはじめ「おとうさん」と呼ぶようになります。しかし、ジャン・バルジャンに追跡の手が伸びてきました。追われるふたりは修道院に逃げ込み、そこで園丁をしていた、かつて馬車の下敷きになった老人に助けられます。やがて、ジャン・バルジャンも園丁として働き、寄宿生となったコゼットにも笑顔が戻ってきました。

 (2022.07)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!