キジしろ文庫

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モリエール「人間ぎらい」

あらまし

 主人公のアルセストは世間知らずの純真な青年貴族であり、虚偽に満ちた社交界に激しい憤りさえいだいているが、皮肉にも彼は社交界の悪風に染まったコケットな未亡人、セリメーヌを恋してしまう――。誠実であろうとするがゆえに俗世間との調和を失い、恋にも破れて人間ぎらいになってゆくアルセストの悲劇を、涙と笑いの中に描いた、作者の性格喜劇の随一とされる傑作。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書では、天然ボケの堅物キャラのアルセストが、欺瞞と偽善がまかり通る社交界に、世間知らずの実直な振る舞いをした結果、当然の如くバッサリと社交界にしてやられてしまいます。それは、よりによって最悪の女性だったり、最後までセリメーヌと噛みあわないアルセストの立ち回りだったりが自然とおかしさを誘うのでしょうし、全体を通して、社会風刺にもなっているのだと感じました。

 以下は、備忘のための簡単なとりまとめです、参考まで。

・アルセストは、みなの心を引きよせる誰にも優しく愛想を振りまく、美しいセリメーヌを愛してしまいます。アルセストは、ライバルへの嫉妬心や、セリメーヌの煮え切らない気持ちをハッキリと聞きたくて、セリメーヌにせまります。

・ところで、セリメーヌとは、本人のいないところではその悪口などを平気でたたく一方で、男性たちの前では誰にでもいい顔を見せようとする八方美人的女性でした。そんなわけで、セリメーヌは、アルセストに想いを抱く、友人アルシノエからの忠告を受けます、がしかし、アルシノエの陰口の暴露で返り討ちにし、逆に自分のモテぶりを鼻にかけます。

・そこで、アルシノエは、アルセストに、セリメーヌから騙されていることを忠告しました。また、アルセストの恋のライバルであるアカストとクリタンドルも、セリメーヌから想われているという、互いの証拠を確かめ合おうとし始めてしまいます。

・このようにして、ライバルのひとりのオロント宛の手紙を入手したアルセストは、セリメーヌに騙されていたことがわかり、セリメーヌに真意を問いただします。しかし、セリメーヌは、アルセストのまだ残っている恋慕を利用して、疑いをかけ信用をしないアルセストを想っていた自分を責めて、同情を誘うことで、さらに欺こうとします。

・そして今度は、アルセストとオロントとふたりがかりで、セリメーヌに詰め寄りますが、無愛想な真似はできないと、気持ちを悟ってもらうよう言って、セリメーヌはなお逃げます。

・なお、この間、アルセストは、以下によって「人間ぎらい」の意が増してしました。

①アルセストは、ライバルのオロントの詩を、お世辞もなく率直に酷評してしまい、調停となって和解します。

②抱えていた訴訟事件が、道理に適うものとして、直情径行的に何の奔走もしませんでしたが、陰謀によって敗訴してしまいます。これにより、公明正大さや正道は、奸悪・非道・邪曲に蹂躙されるといった、悪人の巣窟のような交際社会に辛抱できなくなっていました。

・話を戻して、ふたりの他にさらに、ライバルのアカストとクリタンドルが加わります。ここで、実は、セリメーヌは、四人(アルセスト、オロント、アカスト、クリタンドル)それぞれへの情を示しながら、他の男性を卑下していた、という手紙が明らかになってしまいます。やっと、セリメーヌは観念する一方で、開き直ってもしまいます。

・しかし、皆の気持ちが冷めてしまうなか、恋に狂っていたアルセストは、セリメーヌの罪は社会の悪弊によるものと思いこみ、赦そうとします。そして、世間から離れてふたりでいっしょになろうとしました。それでも、セリメーヌは、拒絶しつつも、アルセストの気持ちに添おうとする二枚舌を使ってしまいます。これには、さすがのアルセストも、とうとう愛想がつきてしまいました。

 (2022.05)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!