キジしろ文庫

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ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン「くたばれスネイクス!」

あらまし

 アレグザンダー・ジョーンズは、地球からおよそ500光年離れた惑星トーカ駐在の全権大使として、日夜闘いつづけていた。住民の名はホーカ。テディ・ベアそっくりのかわいらしい生物で、知性も高く純真無垢。ただひとつの欠点はあまりにも想像力が強すぎて、事実と虚構の区別がつかないことだった。地球の文化に夢中になるや、野球にジャングル・ブック、スパイ小説にナポレオン…とそっくり模倣し、しかもなりきってしまうのだ!そんなかれらの文明レベルを、なんとか自治権が得られる高さまでひきあげようと、ジョーンズは孤軍奮闘悪戦苦闘するのだが…!?(文庫本表紙見返しより)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書では、地球の文化をまじりけなしに熱中してしまう、黄金色の柔毛の生えた1mそこそこのテディベアの風貌のトーカ人が、全権大使のアレグザンダーの深謀遠慮も一切顧みることなく、大脱線をやらかして通してくれます。しかも、トーカ星などの支配や汎生物連盟に対する姑息な手段や陰謀を打ち出す異星人からの危機に、アレグザンダーたちは、破れかぶれでトーカのなりきりの流れや力を使うことで、断ち切ってしまうところが、おかしくも心地よい疲労感を得ます。

・野球編では、アレグザンダーの即興詩によって、トーカの気持ちが高まり、敗戦濃厚をひっくり返します。

・スパイ編では、トーカの諜報活動が演じられた先で、植民地計画の密約の真相を究明することができました。

・動物編では、不時着した誘拐取引を目論む異星人を、ジャングルの掟を使って、打ちのめします。

・ナポレオン編では、異星人の宇宙国粋主義の陰謀による破壊工作に煽られた、トーカの英仏開戦と崩壊を、司令官・公爵になりきり、そして歴史を示して、阻止します。

P266 解説 

 そう、SFとはユーモアなのだ。

・・・

 そこで説明のため出てくるのが「相対化」ってやつ。常識とか、今ある世界とかを、絶対的なものじゃなく、可能性のひとつとして考える。そしてそういう常識とか「あるべき姿」とかをいろんな道具立てでひっくり返し、他のいろんな可能性を示していくのがSF。

 でも、そういう「ひっくり返し」は、実は日常生活においてだって小規模ながら行われている。常識のちょっと裏をかくと、笑いとか驚きが生まれる。それが「ユーモア」、言葉を変えて言えば、そう、「センス・オブ・ワンダー」なのだ。

 (2022.01)

CM 

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