ヘミングウェイ「武器よさらば」(上)
あらまし
第一次世界大戦の北イタリア戦線。負傷兵運搬の任務に志願したアメリカの青年フレデリック・ヘンリーは、看護婦のキャサリン・バークリと出会う。初めは遊びのつもりだったフレデリック。しかし負傷して送られた病院で彼女と再会、二人は次第に深く愛し合っていくのだった…。(文庫本裏表紙より)
よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★★★星3
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
以下は、備忘のための簡単なとりまとめです、参考まで。
・やめることのできない凄惨な戦況のなかで、主人公フレデリック・ヘンリーをはじめとして多くの隊員が内心うんざりし、無力感に苛まされ、戦意を失っています。そして、この空疎な戦争から、みな、目をそむけ深入りせず、酒や女などで刹那的にやり過ごし、やがて従軍していくといった、精神を荒廃させる悪循環のなすがままが続きます。そうした中で、主人公は、前線での不意の砲撃によって、主人公の同行の整備兵たちのあっけない死を目の当たりにし、自らも重傷を負ってしまい戦線を離脱します。そこで、主人公の関心は、その治療と看護婦キャサリンに向けられるようになりました。
・その療養中では、主人公本心からの看護婦キャサリンとの熱愛、そして妊娠。異動によって離れてしまうことを躊躇った結婚。主人公の再度の、15万の兵士を失ったなど悪化する前線に送られる際の痛々しいふたりの別れ、など。このようにして、主人公は、直感的に心が求めた、ふたりがひとつに溶け合うような恋愛をし、そして、やさしさや思いやりある愛情を心から尽くしていきます。しかし、ふたりは、戦争という大きな時流に、容赦なく巻き込まれていきました。
・ここまでで、主人公は、おそらく、ピュアな精神世界の魂をもった存在なのだろう、と思いました。このため、日常卑俗な世界や、ましてや終わりにしたいとは思ってはいるものの、戦争の愚行にもなじめず・楽しめず・関心をもてず・居場所がなかったのでしょう(屈託なく友情を示す外科医リナルディにも積極的ではありませんが、神父とは「愛」を語るなど気が合いました)。しかし、キャサリンとの愛の交歓によって得た情感が本性の清楚な魂を突き動かし、キャサリンのいる現実に楽しみやハリを感じることで、現実世界の中で生きることに意味を見出すことになったのだろう、と思いました。
(2022.05)
CM
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