キジしろ文庫

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フィリップ・K・ディック「火星のタイム・スリップ」

あらまし

 水不足に苦しむ火星植民地で暮らすジャックは、イー・カンパニーの修理員として毎日ヘリコプターで各地を飛びまわっていた。ある日、修理先の酪農場をめざしているとき、火星の原住民―ブリークマンたちが砂漠で遭難しかけているとの連絡をうけ、現場に急行する。そこで、火星で絶大な権力をもつ水利労組の組合長アーニーと出会い、思いもよらぬ事件にまきこまれていくが!? 時間と認識をめぐる悪夢を鮮やかに描く傑作(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書について、以下は簡単なとりまとめです、参考まで。

・火星の水利労組の責任者アーニーは、ふんだんに貴重な水を使い、密輸した高級食品を食べ、我が物顔で周囲を従えています。

・特殊施設にいるマンフレッドは、自我を喪失した精神分裂症で、異なる時間軸・邪悪と狂気に満ちた内面の異界へ他者をも引きこみ、しかも操作によって結果を変えてしまう異能児でした。その父ノーバートは、密輸高級食品をアーニーと取引していましたが、意志疎通のとれない息子を憎んだことを悲観して自殺してしまいます。

・アーニーは、ノーバートが自殺したことから、自ら高級食材の密輸を直接手掛けます。しかし、ノーバートのロケット整備員オットーが密輸を立ち上げたため、アーニーは、その留守の際に貯蔵品を奪い、ロケット発着場も破壊してしまいます。

・主人公ジャックは、FDR山土地開発の噂や投機家の出入りの動きを知って、アーニーの元でマンフレッドと接触できる緩速室の製作(正常者と異常者との間に橋を渡す)を、未来予知のために行うこととなります。

・主人公ジャックは、火星のFDR山の土地投機のためにやってきた父とマンフレッドとともに、標識設置のため現地を訪れます。その際、マンフレッドは、荒廃した怪異な国連-COOP連合の大規模複合施設という未来図を描きます。

・それをジャックから知ったアーニーは、ジャックの裏切りを感じ、マンフレッドの精神的能力の影響によって、殴殺までは至りませんでした(かつて分裂症だったジャックは、護符によって?怒りをかうという現実と向き合うことができました)。

・次に、アーニーは、火星現地人のブリークマンの仲立ちを得てマンフレッドの力によって、主人公ジャックの父の前に土地登記を済ませようとします。しかし、憎悪と肉欲と死の過去へ戻ってしまい、しかも目覚めたところで、恨みを抱いたオットーによって銃殺されてしまいます。

(常に誰をも自分の思い通りしたいと、周囲ををあしざまに扱い、このように怒りと憎しみを周囲に持ち続けたアーニーは、マンフレッドによって操作され・引きこまれてしまったのかもしれません?)

 

(2021.08)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!