キジしろ文庫

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ディケンズ「二都物語」(上)

あらまし

 スパイ容疑で逮捕されたフランス亡命貴族のロンドンでの裁判。とある医師の娘が証人となり、弁護士の奇策もあって被告は罪を免れる。一方パリの居酒屋では血腥い計画が着々と練られ…。二つの首都の間で絡み合った因縁の糸が解けていくなか、革命の足音が近づいてくる。(全2巻)(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書については、備忘のための簡単なとりまとめをしました、参考まで。

・18年のあいだバスティーユに投獄され、その後に釈放された医師を父に持つルーシーが、パリで侯爵の叔父をもつものの、その非道ぶりと嫌悪される身分や財産の世襲を放棄して、ロンドンで英語教師となったチャールズと、裁判をキッカケに知り合い、お付き合いを始め、チャールズは本名を明かすことのないまま結婚にまで至ります。

・裁判での弁護士を務め、チャールズと瓜二つの容貌をしていたカートンも、ルーシーに想いを寄せていました。しかし、酒浸りで無愛想・人好きのしないひねた質の自分は相応しくないと慮り、その身を引くとともに、やさしく慰めるルーシーとルーシーの愛する人たちのためには身を尽くすことを誓います(カートンーチャールズーマネット父娘の三角関係が成立です)。

・ルーシーの父マネット医師は、釈放時は投獄や拷問によって自我や記憶を失っていました。その後は回復し、やがてルーシーたちの結婚について、チャールズ本人に欠陥があったとしても責任がないならばという前提で、自由な意志での幸せな結婚を喜びます。しかし、結婚式の日に、自身の投獄の理由などの記憶がかすめたことから、再びこころ病んでしまいます。

・パリの居酒屋ドファルジュ夫妻は、釈放後のマネット医師の身元引受人でした。ところで、チャールズから相続を断わられた叔父は、自分の馬車が子供を轢き殺しても高慢な態度を崩さなかったことから、子供の父に復讐されます。しかし、王党派はその父を絞首刑にして見せしめにしてしまいます。ドファルジュ夫妻は、その父の減刑嘆願書を出しており、じつは居酒屋は反専制貴族のアジトでもありました。こうした事の始終を聞いたことから、チャールズ含めた侯爵一族を襲撃対象に加えます(ドファルジューチャールズーマネット父娘の三角関係が成立です)。

・なお、この背景には、市民や領内の農民が貧窮と飢えに苦しんでいても、身分世襲の貴族は退廃しながらも雅び享楽に耽り、また、落ちぶれるがゆえに、横暴で非情残忍にふるまい、そして、気の向くままに投獄し凄惨な処刑を行うなどの特権を貪っていました。このような自由平等の観念のない野蛮で卑劣、そしてその格差への庶民の不満や遺恨が募るといった不穏なフランス世情がありました(フランス革命前後)。

 (2022.03)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!