ディケンズ「クリスマス・キャロル」
あらまし
クリスマス前夜、けちで気むずかしいスクルージの前に現れた3人の幽霊たちは、過去・現在・未来を見せてくれたのですが…。19世紀イギリスのクリスマスをいきいきと伝える物語。小学5・6年以上。(文庫本裏表紙より)
よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★星1
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
以下は、備忘のための簡単なとりまとめです、参考まで。
クリスマスのお祝いは、貴賤貧富の分け隔てなく誰もが、心から同じ仲間となって、恵みに感謝し、喜び楽しむもの。
ところが、わたしたちは、俗世にうつつをぬかしてしまうと、知らぬ間に利己心や差別・欲得の非情な心が巣くい、クリスマスを無意味なものとして遠ざけてしまう。
こうなると、わたしたちの死後の魂は、重い鎖に縛られてしまう。そこで、生前になしえなかった心の分かち合い(憐れみと施し)をしようとしても、既にできなくなっている。だから、その魂は、悔い・嘆き・悲しみ、苦しみ通すしかない。
そこで、強欲で罪深いスクルージの場合には、人間のなすべき慈善・情け・寛容・思い遣り、そして皆の幸せということをわかってもらう(救い)ため、自分と身近な人たちの過去・現在・未来のクリスマスを見せて、そして改心し生き方を変えてもらうこととなりました(甥の家でクリスマスを過ごし、部下の安かった給料を上げ・クリスマスの贈り物をし、その後も足の不自由な子の面倒をみるなど、心をひらき助け合い・喜びを分かち合うようになりました)。
(1)過去では、スクルージは、情愛を失った自分の姿に、耐え切れなくなります。
・クリスマスに仲間外れにされた素朴な子供時代。
・その後、孤独のクリスマスを一緒に過ごそうとした亡き優しい妹。
・修業時代の心寛い親方たちによって楽しく過ごせたクリスマス。
・お金の亡者となって情愛を失くした婚約の解消とその女性の結婚後の幸せなクリスマス。
(2)現在では、スクルージは、周囲の優しさや思いやりに比べて、自分の冷たさや身勝手さにうろたえます。
・クリスマスを迎えて華やぐ町で、陽気で心はずむ人たち。
・足の不自由な子(余分な生命は不要と言っていたことを、案内役の幽霊から窘められます)をもつ、事務所の部下の幸せで感謝に満ち、互いを愛し、お祝いを楽しむクリスマス。
・クリスマスのお祝いに何度でも誘おうとし、スクルージへの祝福をする甥のにぎやかなクリスマス。
・そして、虐待による無知と欠乏によって野獣や怪物のようになった醜い子どもを見せた幽霊が、かつてスクルージが牢獄や救貧院に任せろなどと言って、見て見ぬふりをしていたことを窘めました。
(3)未来では、スクルージは、自分の惨めな死を見て、神の慈悲にすがります。
・誰にも見守られず、悲しまれず、心にもかけてもらえない自分の死に対して、仕事仲間たちからの無関心や冷やかさ、死体から衣服などを剥ぎとって商売する男女、借金返済の猶予に喜ぶ夫婦、これとは対照的に、部下の足の不自由な子の死を悼む家族。
(2022.05)
CM
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