ダン・シモンズ｢ハイペリオン｣（下）
あらまし
迫りくるアウスターの脅威と、殺戮者シュライクの跳梁により惑星ハイペリオンは混乱をきわめていた。連邦政府より命令をうけ、この地に降りたった、神父、軍人ら経歴もさまざまな七人の男女は、一路“時間の墓標”をめざす。その旅の途上で明らかにされていく、数奇な宿命を背負う彼らの波瀾にみちた人生の物語とは…?SFのあらゆる魅力を結集した壮大なる未来叙事詩、ここに開幕!ヒューゴー賞・ローカス賞受賞作。（文庫本裏表紙より）
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よみおえて、おもうこと
雑感･私見レビュー:★星１
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
(5)赤子を抱いた、歴史学教授ソル・ワイントラウヴ
ワイントラウヴの25歳の娘レイチェルが、時間の墓標群のひとつのスフィンクス内で、博士論文の考古学調査中、天井が降下するといった場の時潮にのまれ、そこでシュライクに捕らえられたところで気を失います。この後、レイチェルは、昨日の記憶を失うとともに、過去の自分に溯るという、謎の年齢遡行が始まります。ワイントラウヴは、我が子の将来に不安（消滅）を抱えますが、連邦、教団からは相手にされず、妻も事故で亡くなり、時間ばかりが過ぎます。この間、両親の夢に、シュライクがレイチェルを生贄に捧げるよう度々顕れてきました。ワイントラウヴは、苦悩する中、この夢の服従と贖罪を求める神へのばかばかしさに気付いたところで、ハイペリオン巡礼の宇宙船の中で、赤子のレイチェルとともに目覚めます。
(6)女性探偵ブローン・レイミア
ウィルス攻撃を受けAI本体にも情報欠損がでたことから、詩人キーツの人格を復元し成長させたサイブリッドのジョニィ（自我は連邦AI群・コアのなか）が、殺人調査の依頼をレイミアにします。ジョニィは、人間の管理下を離れたAIが、自我の人工的存在認識や仮想とリアル環境の違いから狂乱・廃人化するため、その数を減らしてきている（人間が行ってきた）サイブリッドに興味を持ち、完成させたものでした。
レイミアは、事件直前に会っていた教団関係者と辮髪の男を突き止めるなか、ジョニィが拉致されそうになっため、逆にジョニィをおよがせます。付け回す辮髪男を撃退後、ジョオニィがレプリカの地球に連れ戻ったところで、事件は、AIのしわざ？もしくは、AIがかつて計画した究極知性の一環？と、推察します。
ふたりは関係を深めた後奇襲にあいますが、教団関係者がジョニィをシュライク大聖堂へ拉致しようとしていることがわかります。ふたつに追われたふたりは、大聖堂を訪ねたところ、かつてジョニィが行った、ハイペリオン巡礼の申し出と撤回に伴う意志の再確認を求められます。
コアとアウスターには不自然な繋がりがあること、コアは人類抹殺にもつながる究極知性を推し進めているが、コアの未来予測の適用外となってしまう時間の墓標の力場（時間遡行により、過去に干渉することで未来の戦争に勝利する）に強い関心をもっていること、 一方、ジョニィにはハイペリオンの情報がブロックされていたこと、ジョニィはコアへの侵入とサイブリッドへの意識転送により人間になり、そしてハイペリオンに向かおうとしたこと（これにより殺されそうになった）、こういったことから、むしろメリットのある教団大聖堂へふたりは向かいます。しかし、その途上、襲撃によりジョニィは倒れ、その記憶がレイミアに埋め込まれたリングに流入したことで、レイミアはシュライクと相対することに進みます。
(7)領主
マウイ＝コヴェナントの環境保全を背景に連邦加盟の反乱のキッカケを作った祖母をもつ領主は、連邦の外交官となって入植者の手助けをし信頼を得ることに努めました。一方、連邦にとって潜在的脅威のアウスターを挑発しハイペリオンを攻撃させ、併合に反対するコアに対して、その支配を強固なものとする謀略を、連邦は持っていました。そこで、領主は、その任につきますが、アウスターに捕らえられたところ、その進化と、地球滅亡はコアと手を組んだ競争相手の皆殺しという現在の姿である連邦に驚きます。
幻滅をおぼえ、二重三重のスパイとなって、ハイペリオンに派遣された領主は、ともにいたアウスターを射殺し、時間の墓標を開放してしまいます（シュライクがしかるべき者に渡すべく、未来からの逆タイムカプセルのようなもので、アウスターとしては、人類が時間遡行させて、コアの束縛から人類を解放するために、送り込んだものと見ている）。そして、本格的な開戦に至ります。
(8)教団のヘット・マスティーン船長
時の墓標へ向かう途中、流血跡を残して消えてしまいますが、シュライクに対して力場を食べる生物を詰め込んだケースは、持ち運ばれます。
（2021.01）
