キジしろ文庫

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ジョージ・オーウェル「動物農場」

あらまし

 飲んだくれの農場主ジョーンズを追い出した動物たちは、すべての動物は平等という理想を実現した「動物農場」を設立した。守るべき戒律を定め、動物主義の実践に励んだ。農場は共和国となり、知力に優れたブタが大統領に選ばれたが、指導者であるブタは手に入れた特権を徐々に拡大していき……。権力構造に対する痛烈な批判を寓話形式で描いた風刺文学の名作。『一九八四年』と並ぶ、オーウェルもう一つの代表作、新訳版(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 本書は、悪化は良貨を駆逐するといった、悪がはびこり始めると善が滅びてしまう世界が描かれています。他国の腐ったミカンは、内政干渉してしまい、簡単には取り除けません。なので、わたしたち社会には、為政者・権力者などの言動・計画と実施結果の客観事実や情報の公開(とくに暴力や金銭の癒着など)、その点検や診断といった論議の機能、それらを経た選任方法などの民主化手続き、そして万が一の時の訴訟制度や人道介入措置、このような仕組みを講じておくことの大切さをあらためて痛感しました(会社、学校は、残念ながら、ほぼ4つ目しかありませんね)。

 なお、本書の大方の要点は、以下の通りで異論なしです。

・無意識のうちに権力に飢えた人々が主導する、暴力的な陰謀革命は、結局はトップの首のすげかえにしか終わらないことを示したいのだ(P202訳者あとがき から引用)

・そうした動物たちの弱腰、抗議もせず発言しようとしない無力ぶりこそが、権力の横暴を招き、スターリンをはじめ独裁者をー帝国主義の下だろうと社会主義の下だろうとー容認してしまうことなのだ。(P204訳者あとがき から引用)

 

 さて、以下は、備忘のための簡単なとりまとめです、参考まで。

・酒浸りで僅かばかりの餌で動物たち(労働者)を酷使していたジョーンズさん(皇帝)は、チョットした騒動が反乱となって追放されてしまい、動物たちが農場を運営するようになります(ロシア3月革命)。

・この間、豚のメイジャー(レーニン)が集会(評議会:ソビエト)を開き、獲得した英知について動物たちに教え諭していました。それは、人類圧政の転覆という暴力革命による自由の獲得と動物たちの結束を訴え、また、ベッドで寝たり、酒を飲んだり、取引したり、そして動物どうしの圧政のないようにという人間の悪徳を戒めるものでした。

・そのメイジャーの老死後を継いだ豚のナポレオン(スターリン)、スノーボール(トロツキー)、スクウィーラー(ベリヤ)が、革命後にメイジャーの教えを発展させた動物主義(すべての動物は平等など)を動物たちに教えこみます。

・このようにして才知に優れた豚が指導的地位に就き、他の動物たちが能力に応じて収穫などの農作業をしたことで、食べる量も増え、余暇もでき、毎週毎の会合も開かれることとなります。なお、この辺から、余ったミルクや落ちたリンゴを、言い訳しながらせしめるなど、豚たちは特権を使いはじめます。

・その後のジョーンズたちの農場の取り戻し(コルニーロフの反乱、11月革命)にも、スノーボール以下皆で撃退します。やがて、風車建設による作業の電化機械化計画の是非を巡り、農場の防衛問題など意見の合わない政敵どうしのナポレオンとスノーボールは対立します。

・しかし、ナポレオンは、隔離してコッソリ育て巨大となった犬たち(秘密警察)を、噛みつかせようとし、スノーボールは農場外に追放されてしまいます。そして、これまでの会合は、議論のない豚からの指令の場となり、反対だったハズの風車建設の宣言がなされます。これについては、風車建設は元々ナポレオンが考案したもので、ナポレオンは、危険人物排除のための反対のフリをしていた戦術であったとの説明が、スクウィーラーから皆にされました(政敵更迭と業績横取り)。  

・このような追加作業に伴う重労働と餌の配給減も、効率の良い動物たちの作業方法や人間の搾取分がなくなったことによって埋め合わせできました。しかし、油や釘などの用品不足が生じてきました。これに対して、ナポレオンは近隣農場との取引を行うこととします。また、豚は農場邸宅へ引っ越すなど、定めた戒律とは異なる行いも起きますが、スクウィーラーが皆を都合よく言い含めます(事実の歪曲)。

・その後、暴風雨による風車が損壊しますが、これもスノーボールの仕業となってしまいます。それでも、みな風車再建に励みますが、不足する食料の調達のための無理な卵生産に対してメンドリたちが抗議したところ、ナポレオンは配給を停止して、メンドリを死なせてしまいます(恐怖政治の始まり)。

・また、スノーボールの農場侵入の疑いやジョーンズとスノーボールの結託など、スクウィーラーが反スノーボールの地ならしを進めます。そして、これまでナポレオンに反論した者や、スノーボールとの共謀した?罪の告白をした者たちへの犬たちによる処刑が行われました(大粛清)。  

・動物たちは、恐怖と虐殺のなかでも、人間阻止のためナポレオンの指導を受けいれ、風車は完成し「ナポレオン風車」と命名されます。ナポレオンは指導者としての尊敬を強いる一方で、暗殺計画の噂ものぼり警備をつけます(告白したメンドリは処刑)。

・やがて、動物への虐待行為を行う隣地のフレデリックヒトラー)が、風車への嫉妬をもったことで農場は攻撃されます。この結果、風車の破壊や多大な犠牲者がでたものの侵略は防ぎましたが、これも、スクウィーラーによって「大勝利」に置き換えられます。

・そして、この数日後には、豚は飲酒をおぼえ、ビール生産にとりかかり、道を譲るなどの特権やデモ行進を皆に強制させるようになります。さらに豚と犬を除き食料不足が進む中、農場は共和国としてナポレオンを大統領に選出します。そして、過労で倒れた馬のボクサーを治療と偽り馬肉処理などの解体処分にしてしまい、得たお金でウィスキーを箱買いします。なお、これも、スクウィーラーは否定します。

・こうして動物たちは、畑の拡張や風車の再稼働をさせたものの、依然、空腹と過労などで豊かさを感じません。しかし、動物自治の特権とプライド、そして「すべての動物は平等」という理念と実践だけが心の拠りどころとして働きます。こんななか、ついに豚は、衣服を身に付け、前足に鞭をもち二本足立ちし、人間との遊興と取引を行います。ここで、豚は他の動物たちを下層階級として蔑んでいることが知られ、動物たちは人間と変わらなくなった豚を目の当たりにしました。

 (2022.03)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!