ジェニファー・L・スコット「フランス人は10着しか服を持たない」
あらまし
典型的なカリフォルニアガールだった著者が、フランスのマダム・シックから教わった、 毎日を「特別な日」のように生きる方法。
*間食はせず、食事を存分に楽しむ
*上質なものを少しだけ持ち、大切に使う
*日常の中に、ささやかな喜びを見つける
情熱的に、心から満足できる人生を送りたいあなたへー。70万部超えのベストセラー、待望の文庫化!(文庫本裏表紙より)
よみおえて、おもうこと
雑感・私見レビュー:★星1
《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》
本書では、日常の生活の質を高めることが、人格形成、個性やライフスタイルの確立にもつながり、手早く容易に楽しみながら、しかもしっかり確かなものが身につくといった、ワクワクするような気分のよさを覚え、すぐにでも試してみたくなる内容でした。
それは、若いアメリカ人女性が、自分らしさとして、しっかり消化して落とし込むこととともに、食事やみだしなみ、会話やふるまいなどの外面をなぞるだけでなく、「人生とは旅であり、目的地ではない」「何をする、のではなく、どのようにする」といった価値観や人生観にまで踏み込んでいるポイントがあるからだと思うからです。
その一方で、自由気ままな女性が、シックといった伝統や格式をも、その飽くなき欲望の下に取り込み加工再生産(人工化)していくさまにも、見て取れます。
さらに、上品で洗練されているさまといった「シック」という主義や指向が、依然として変わることのない物質主義の思考のなかで、都合よく自分サイズに何でもかなえてしまうところ、合理的にドライに解釈し取り扱うところ、さらにこれらを商業ベースにのせ一般化してしまうところといった、モノ化させている手法がとても巧みであって、むしろ呆気にとられる思いにもなります。
なので、本書の「シック」はとても手軽で、扱いやすく、からだにフィットするのかもしれません。(2020.07)