キジしろ文庫

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オー・ヘンリー「賢者の贈り物」 オー・ヘンリー傑作集1

あらまし

 1ドル87セント。クリスマスを翌日に控え、若妻デラが愛する夫へのプレゼントに費やせるのは、たったこれだけ。でも、夫にどうしても価値のある贈り物をしたい。デラは、自慢の髪を売る決心をする―(「賢者の贈り物」)。アメリカ文学史上、屈指の短編の名手オー・ヘンリー。300編近い作品のなかから、もっとも有名な表題作をはじめ、「警官と賛美歌」「金のかかる恋人」「春の献立表」など16話を収録。(文庫本裏表紙より)

 よみおえて、おもうこと

 雑感・私見レビュー:星1 

《以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。》

 以下は、備忘のための簡単なとりまとめです、参考まで。

 なお、表題後の「・・・〇〇」は、その意図することをあらわしたものです。

1 警官と讃美歌・・・勤労

 冬を刑務所で越そうとした浮浪者が、ショーウィンドウを毀したり、無銭飲食したり、女性を誑かしたり、傘泥棒したりします。しかし、相手にされなかったり、逆にたかりや泥棒っだったりと、警察に捕まることができません。やがて、聞こえてきた教会の讃美歌に思いをはせ、改心し働こうと決心したところ、挙動不審で逮捕されました。

2 賢者の贈り物・・・愛情

 夫婦それぞれが大切にしていた髪と金時計を、大好きな気持ちとしての贈り物(櫛、時計をつける鎖)をするために代えてしまい、台無しにしてしまいます。しかし、おかげで、ふたりの深い思いを通じ合えることができました。

3 忙しい株式仲買人のロマンス・・・全力

 あまりの忙しさに結婚したことを忘れて、仕事の切れ目でもう一度の求婚をしてしまいます。もちろん、やさしくさとされました。

4 洒落男の失敗・・・虚栄心

 主人公の男性は、真面目に働いたお金を貯めて、70日に1度、お金持ちになり切った上流階級の贅沢を楽しみます。男性は、道端で足をくじいた女性に好意を寄せ食事に誘いますが、女性は貧しくても堅実に仕事をする男性を望み、ふたりの気持ちはすれちがってしまいます。家に戻った男性は、正直に話せばなどと後悔する一方で、本当はお金持ちの女性は、社交とクラブを行き来する怠け者ばかりしかいないと嘆きます。

5 御者台から・・・幸せ

 酔漢となった馬車の御者が、乗せた女性がお金を持ってないとわかり、警察につきだしたとろ、酔いが醒めてきて、出発前に結婚した妻として紹介できました。

6 第九十九分署の外交方針・・・偏見

 移民を避けて馬車事故を起こした消防隊のもとへ、その視察に訪れた副総監の電気自動車が暴走します。事故後に、お詫びにきていていた移民が、残った馬を使って救助に成功します。事故でケガをしていた隊員は、コサックのように馬を乗りこなした移民を認めて、日本びいきをロシアへと変ります。

7 金のかかる恋人・・・無知

 貧しくも美しい百貨店員の虜となった、お金持ちの男性が求婚します。そこで約束した夢のような新婚旅行は、その疑り深い女性にとっては、ただの遊園地としか映らなかったことから、お金持ちの男性の想いはとげられませんでした。

8 桃源郷のはかなき客・・・誠実

 瀟洒なホテルで意気投合した、洗練され気品あるふたりは、優雅な上流の暮らしに安らぎを得ています。やがて休息を終える最後の日に、最高級の時間をもとめて1年間の貯金できた店員や集金係であるという、互いの嘘を正直に告白しました。これにより、あらためて、ふたりのお付き合いを続けることができました。

9 ハーグレイヴズのふたつの顔・・・忠義

 今は下宿屋にいる、南部の歴史・伝統を大事にする元大農園家・少佐が、南部の想い出話から、同じ下宿の劇場役者と親友同然の仲になります。ふとしたキッカケで彼の舞台を観てみると、少佐そっくりのいで立ちと演技、少佐の話の誇張と曲解によって、芝居は大成功をおさめました。役者は、侮辱と無礼、信頼を損ねたと憤る少佐に、お世話になったお礼に、少佐の窮状のお手伝いを申し出ますが断れます。そこで、かつての農園の農夫で裕福となった黒人に扮して、お金を払っていないラバの代金を返すという、忠義をつくした行いをすることで、少佐は役者のお金を受け取ることができました。

10アイキー・シェーンスタインの惚れ薬・・・嫉妬

 主人公の薬剤師は、三角関係にあった友人とその女性との駆落ち計画を聞かされ、心変わりを防ぐための惚れ薬を頼まれます。主人公は睡眠薬を処方の上、女性の父に告げ口をし、その父は殺気立ちました。このような妨害をしたにもかかわらず、友人が下宿の夕食時に、その父に喜んでもらいたいがために、薬を父のコーヒーにいれたことで、この駆落ちは成功してしまいました。

11富の神とキューピッド・・・親心

 お金で買えないものはないと言うほどのお金持ちの父親が、息子から、お相手の話を聞きました。それは、息子は、女性の渡航前の最後の機会に求婚しようと考えているが、その時間は僅かなことから望みをもてない、ということでした。その話を聞いた叔母は、恋が実るお守りの指輪を息子に授けました。いよいよ、息子が女性を馬車で出迎えましたが、その際にその指輪を落し捜したことで、渋滞に巻き込まれてしまいました。しかし、逆に、ふたりの時間がもてたことで、婚約に至りました。ただし、この真実の愛は、父親がお金で工作した渋滞によるものでした。

12緑のドア・・・好奇心

 歯科医のチラシ配りから、緑のドアと書かれたチラシをもらってしまった主人公は、冒険好きなことから、歯科医のあるビルにある、緑のドアを訪ねました。中では、職を失って3日間何も食べていない女性がいたため、食べ物を持ち込んで、助けてあげました。さて、チラシ配りによれば、緑のドアとは、劇場宣伝のために混ぜた「演目」でした。

13マックの救出代・・・友情

 鉱夫を引退して、のんびり暮らしていた友人ふたりでしたが、ある時、主人公は、マックから、治安判事となったことと、結婚式をあげることを聞きました。年寄りの冷や水と思った主人公は、その若い女性に、自分の好きな男性と式の時間を繰り上げてもらって、マックよりも先に結婚してもらうよう、お金を渡して頼みました。そして、マックは、牧師の代わりとして、時間を早めて滞りなく無事に立ち会うことができました。

14振り子・・・習慣

 結婚生活2年の主人公は、不満に思う妻を残して、毎夜のビリヤードに出掛けていました。しかし、突然の妻の母への見舞いによる不在が、主人公に妻の存在を身に染みて感じさせ、これまでの行いを後悔しました。ところが、早めに妻が戻り、いつもの日常が再開すると、主人公はビリヤードへ出かけてしまいました

15自動車を待たせて・・・欲得

 公園で見かけた美しい女性に惹かれた男性は、その女性に話しかけます。女性は上流階級のお金持ちの暮らしを話し、労働者などの下流の者でも愛することを聞きつけます。本来、お金持ちの男性は、公園から見えるレストランの会計係を名乗ったことで、女性は態度を変えて去っていきます。そして、その女性は、そのレストランに入り、会計係の席に就きました。

16春の献立表・・・愛情

 献立表のタイピストを仕事にする女性は、田舎で恋に落ちた農夫から、タンポポの冠で髪を飾って求婚された後、半年以上離れ離れで暮らしていました。そんななか、恋の想いを毀してしまうようなタンポポ料理をタイプすることに、女性はとても悲しみます。しかし、ついに、農夫が訪れてきました。農夫は、偶然入った料理店の献立表に、タンポポの代わりに自分の名が書かれていることから、女性がいるところを知りあてました。

 (2022.04)

CM 

 最後までおつきあい頂きましてありがとうございました。

では、また!